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緋色side
年を重ねるにつれてあのときの女の子の言ってた意味もわかった。
同時にこのまま萌葱を思い続けたら苦しむ人が出てくることも…
「…こんなに好きなのに…」
中学では少しでも萌葱から離れていられるように敢えて萌葱と違う部活を選び極力萌葱ではなく他の友人たちといることにした。
理由は簡単。いつか来る別れの日笑って見送ることができる為の練習…
高校も違うところを選ぼうとした。けれど萌葱が志望校を変え同じところへやって来た。
萌葱…こんなに近いのに…遠い…
気持ちをずっと隠したまま過ごす高校生活。それなりに充実していた。
俺と萌葱は有名らしく色んな人に告白された。
でもどんなに俺のことを好いてくれても俺は相手のことを相手と同じように愛することは出来ない…だから…全て断った
「緋色くん」
「ちやちゃん?どうしたの?」
ちやちゃんは中学からの友人であるトマリの彼女で付き合ってからもう5年ほどたっただろうか。
とても仲が良くて羨ましいくらいだ。
「ちやちゃん?どこ行くの?」
無言で俺の手を引きどこかへ向かうちやちゃん。
大人しくついていくと連れてこられたのは屋上。
「なにかあったの?トマと」
「マリちゃんと別れた」
「へ?何で?あんなに仲が良かったのに。何かあったの?」
「私に好きな人ができたの」
「え?」
全くそんな素振りは無かったから驚いた。
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