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緋色side
「マリちゃんは何も悪くない…私には勿体無い位の人…」
「…そっか…」
「私…緋色くん。好き」
「え!?」
「マリちゃんと遊んでても気付いたら緋色くんのことを考えてた…始めはマリちゃんの仲良しな人だからだろうって思ってたのに…いつからか…何をしてても緋色くんのことを…好きなの…緋色くんのことが」
「ごめん…その気持ちには答えられない」
「…うん…わかってた…伝えたかったの…でもこんな気持ちのままじゃマリちゃんと一緒に居られない…だから…別れたんだ」
「…」
「聞いてくれてありがとう」
ぼんやりしてた。気付いたらちやちゃんが俺に抱きついていた。女の子のすること…無理矢理突き飛ばす訳にも行かないからされるままになってた。
ちやちゃんの顔が近付いてきて何をしようとしているのかわかったからちやちゃんの唇を手で押さえる
「だめだよ。ちやちゃん。そんなことしちゃだめ」
「へへ…緋色くん優しいから…いけるかなって…思ったけど…」
「虚しいだけだよ。気持ちのないものなんて…」
ぽろぽろ涙を流すちやちゃんはきれいだった。
気持ちが通じていないキスなんて…虚しいだけ…
自分に言い聞かせた言葉だった。俺はいつも萌葱が眠っているときに何度もキスしてる…
でも虚しいんだ…こんなに好きでも…萌葱には気持ちは伝えられないんだから
ちやちゃんが立ち去って暫くして教室に戻った。
そういえば今日萌葱は部活が休みになったんだっけ…
数分前俺のスマホに俺の部活も休みになったと連絡が来てた
「萌葱…」
窓際の萌葱の席へ足を向ける。そっと机を撫でて椅子に腰かけた…
「萌葱…大好き…」
萌葱…ずっとずっと好きでいても良いかな?…俺たちの気持ちは交わってはいけないけれど…
そんなことを考えていたら涙が目に溜まっていく…
その時だった
「緋色?どうした?俺の席で。部活は?」
萌葱が戻ってきた…見られてしまった…こんな姿を…なんとか誤魔化したくて言葉を紡ぐ
「萌葱はもう帰ったんじゃなかった?」
「忘れ物しちゃって…」
「そっか…。俺も一緒に帰ろうかな…最近萌葱と過ごせてないし」
一緒にいたいよ…今日は特に一緒にいたかった…
でも…返ってきたのは…
「家に帰れば会えるじゃん。朝も一緒に登校してるし」
…やっぱり…萌葱は俺から離れたいのかな…悲しくなって
「萌葱は…俺がいなくても平気なの?」
「もう俺たち子供じゃないんだし…」
立て続けに答えた萌葱の言葉が切ない…
「そっか…」
わかってた…わかってたのに…胸が苦しい…痛いよ…
「緋色?何でそんなに苦しいの?」
あぁ…やっぱり…萌葱は萌葱だね…わかっちゃうよね…
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