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緋色side
ボロボロの萌葱と抱き合いながら俺が泣き止むまでそこで過ごした
「萌葱…体痛いよね?苦しいよね…ごめんね…俺のせいだ…」
でもそのボロボロの姿が堪らなく綺麗だよ…
「ごめんね…俺がこんな…教室であんなことしたから…」
「萌葱…萌葱…」
はぁ…罪悪感にかられている表情…好きだな…
「うん…」
「俺…俺…ずっとずっと…お前が好きだった…」
今日でもっと好きになったよ…
「うん」
「でもね…家族のこととか…萌葱の仕事のこととか…考えたら…」
それを考えていて良かった。こんなに高揚した気持ちを知れたのだから
「うん…そうだね…俺たちはやっぱり同じだったね…」
「こんなに好きなのに…どうして…」
俺は萌葱の汚れた姿を美しいと思ってしまうんだろう…
「…何で…だろうね…こんなことになるなんて…想い合ってたのに…何で…気が付かなかったんだろう…いつもお互いの考えること手に取るようにわかってたのに…」
もっと早く伝えていれば自分の中に眠る可笑しな感覚なんて気が付かなくて良かった?
「緋色…大好き…」
「俺も…大好き…」
これから残り少ない高校生活…きっと…もっと…
「萌葱…立てる?」
「ん…大丈夫…」
とは言ったもの萌葱の体は言うことを聞いてくれないのかすぐに踞る…
こんな姿は家族には見せられないけれど念のため問う
「蒼にぃ…呼ぶ?母さん?」
蒼にぃは何かしらうまく対処してくれる。母さんは医師免許もあるらしいから精神面のケアもできるはず…
「…蒼にぃ…今日は藍瑠さんと一緒だから…」
やっぱり見せられないよね…でも俺一人じゃ運べない…だったら…
「瑞季さんは?」
瑞季さんは以前一緒に住んでいたこともあるしその後も俺たちを本当の弟のように可愛がってくれた。それに口は固いしきっとうまく言ってくれるはずだから
「…」
萌葱は無言だったからそれを肯定と捉える
「…連絡してみる…」
一言伝え通話ボタンを押す。相手はすぐに出てくれた
『おー!!ひぃくん!久しぶり!ってどうした?その声…』
声だけで何かを察してくれた瑞季さん。説明も難しくて一言だけ伝える
『助けて…』
『は?どこいんの?』
『学校…教室…』
『わかった。すぐ行く』
そうしてすぐに来てくれた瑞季さん
「もえ!?どうして…?」
何かを思い出したように苦しそうにうつむいた。
教室に充満する雄の独特のにおい…窓を開け放ってたけど換気間に合ってなかったみたい…
だからすぐに状況を把握したんだろう
「ちょっと待ってろ。俺だけじゃ萌葱運べねぇ…圭呼んできていいか?」
「うん…お願い…」
その場で連絡をしてくれて近くにいたらしい圭翔さんはすぐ来た
「萌葱…何で…」
圭翔さんもすぐに状況を把握してくれた
「ごめんなさい…俺が…悪いの…」
俺と萌葱を交互に見て俺の方を見て言葉を発した圭翔さんに答える
「ここで話していても仕方ない…俺らんち連れてく」
二人は今同棲中だからか萌葱は申し訳なさそうに俯いた
「萌葱。余計なこと考えてるだろ。大人しくついてこい」
圭翔さんは人の心に敏感な人だからそんな萌葱の思いに気が付いたのだろう
「わかりました…」
大人しく圭翔さんに抱えられて瑞季さんの車に乗せられ二人の家に向かった。
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