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緋色side
その理由はすぐにわかることになる。
今日もまた萌葱はあいつらに呼び出された。
俺には事を終えた後の画像がいつものように回ってきた。
部活に来た奴ら…1…2…3…あれ?今日もまた緑がいない…
ここ最近は先にトマリたちは戻ってくるけど遅れて緑は戻ってくるようになっていた。
前はトマリの次に緑が抱いてその後他のやつらがという順だったはずなんだけど…
「今日も良かったぜ。萌葱」
「トマリ…もう…やめてよ…十分でしょ?…」
「そうだなぁ…まぁ…飽きたらね。あいつの具合いいからさなかなか…ね?」
「…緑は?」
「さぁ?まだ抱いてるんじゃねぇ?あいつ萌葱の孔にドハマリしてるし。しばらく女いなかったからね。性欲ありあまってんじゃねぇの?気になるならいってくればぁ?今日自主連だし。」
「…」
「その顔…最高だな…緋色…あははっ!」
笑うトマリを一睨みし抱かれているであろう場所へ向かった。
そして見た光景…緑が萌葱を抱き抱えながら激しく律動していた。
萌葱はとろとろになりながら快楽を貪っていた。
その姿はあまりにも扇情的だった。嫌がっている素振りはない…
「萌葱…一緒にいこ…っ…」
貪欲に萌葱を求めながら緑が語りかけ萌葱を見詰める。その瞳には確実に恋情の色が滲んでいた…
「んんっ…」
そうして同時に欲を放ちぐったりし抱き合う二人の姿…それはまるで…そう…愛し合っているもの同士のそれに良く似てた…
萌葱の中に入ったまま抱き締める緑は萌葱にキスをした。それはそれは優しいキスだった。
萌葱はその甘いキスに酔いしれているように見えた…
「んん…」
「萌葱…好きだ…愛してる…」
愛おしそうに萌葱の名を呼び愛の言葉紡ぎ繰り返すキスにもっともっと萌葱は夢中になって俺の存在には全く気付かない…
苦しくて苦しくて…涙が溢れた…どうして?萌葱…俺の事を好きだと言っていたじゃない…どうして…そんなに幸せそうに緑に抱きついているの?どうして俺に気付いてくれないの?
「萌葱…」
思わず萌葱を呼んでいた…こっちを見て…ねぇ…俺だけをその瞳に映してよ…
好きでもないやつに抱かれ苦悶の表情を浮かべながらそれでも快楽に負け欲を放つ萌葱の姿に欲情していたはずなのに…今は俺にだけ全てを…そんな勝手な思いが込み上げて…でも…
「…もしかして…同意だった?ごめん…邪魔して…」
聞かずにはいられなかった。聞いたけれど答えが怖くてうつむいた…ねぇ…無理矢理だって言って?俺だけだって言って?
「緋色…」
言葉が出ない萌葱に悲しくなってその場から立ち去ってしまった…俺のこと好きなら追いかけてきてくれるでしょ?ねぇ…萌葱…
「緋色…」
声は聞こえたけれど追いかけてきてくれる素振りはない…
緑を…選んだの?ねぇ…俺はどうしたらいいの?萌葱の思いが俺にないなら…俺の存在意義はあるの?教えてよ…ねぇ…萌葱…こんなにも愛しているのに…どうして…
結局部活には戻れなくてそのまま帰宅した。
「ただいま」
「お帰り。緋色。部活は?」
「ちょっと体調悪くて…」
「大丈夫なの…?っ?緋色?どうしたの?その顔…病院行く?」
「大丈夫…それより今日は出掛けるんでしょ?俺は大丈夫だから行ってきて。翠も杏子も楽しみにしてたんだから」
今日は俺と萌葱以外は食事に招かれていた。時間的に部活後になると間に合わなかったから元からその予定だった。
蒼にぃは藍瑠さんとこに入り浸ってるし紅ねぇは仕事で泊まりだし今日は久しぶりに二人きりだから実は楽しみにしてた…今日の予定は萌葱は知らない…この話をしたときたまたま仕事やあいつらの呼び出しで居なかったから…だから驚かせて沢山甘やかして…慰めて…沢山やりたいことがあった…でも…
「ほら。父さんと待ち合わせでしょ?あの人また逆ナンされちゃってるかもよ。早く行ってあげなよ。ね?」
母さんは心配そうに何度も振り返りながら出掛けていった
「何か…疲れた…もう…やだ…」
制服のボタンを外してネクタイを緩める…着替える力はなくてそのままソファーにダイブした…
「萌葱…緑が好きなの?…」
誰もいなくなった広いリビングに俺の言葉は吸い込まれた…
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