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緋色side 「緋色。萌葱と俺付き合うことになったから。他の奴等にも話してもう他のやつらが萌葱を求めてくることのないよう今話をつけているところだ。もう時間の問題だから安心して俺に任せて」 緑から呼び出されてそんな話をされたのは萌葱と思いが通じ体を重ねるようになって数日後のことだった 萌葱が呼び出されて抱かれて…慰めて…そうして繋がり続けた俺には衝撃的な告白だった そんなことあるはずがないとわかりながら緑の紡ぐ言葉に俺の心は揺れた… 「萌葱と緋色は周りが認めてくれる関係じゃない。お前たちの両親は同性同士だからといっても偏見は持たないだろうけどさすがに血の繋がりのある相手となると話は別だろ?…未来の見えない関係なんて萌葱が辛いだけだ。それに紅ちゃんにだって萌葱の仕事にだって支障を来すのは避けられようもないだろ?それを全て反故にしてまで一緒にいる決意できる? …緋色…。お前は真面目で情にもろい。だからきっと萌葱の気持ち聞いて責任とって萌葱と一緒にって思ってるんだろ?前から気が付いてた。お前がそういう目で萌葱のこと見てるの。前よりも熱が籠った目で見てるの…ねぇ。緋色。全てを裏切る覚悟はできるの?」 これまでのことが走馬灯のように駆け巡った。両親は優しくて思いやりがあって自慢だ…その両親が泣く姿は見たくない…紅ねぇだって今の仕事を誇りに思い大切に楽しそうに仕事してる…蒼にぃはきっと応援してくれるはず…。でも…翠や杏子は?これから人付き合いも増えていった先で俺たちの関係が知られたら?周りに苛められてしまうかもしれない…俺たちが愛し合ってしまったせいで…そんなの…ダメだ…それに…萌葱を求めている人だって多くいる。俺じゃなくてもそれはそれは沢山…俺のいる意味は?ただみんなを苦しめるだけだ…緑はこうなる前…まだ親友だと呼べた頃…凄く責任感があって強い人だった…緑になら任せられるのかもしれない… 「ねぇ。緋色。その覚悟はある?」 何も答えられなかった…ただ立ち去る緑の背中を黙って見送った… 姿が見えなくなったら力が入らなくなってその場に踞った… 熱いものが頬を伝っていく… 俺の存在意義は… 「ない…」 どうして…何も言い返せなかったのか…よくわかる… 「萌葱から…離れないとならない」 おそらく緑と付き合ってるって言うのは緑の優しい嘘だと思う… 緑は本当に萌葱を愛してくれてる…俺が引かなきゃ…緑だったら… 「萌葱を…お願い…緑…」 それから俺はあからさまに萌葱を避けるようにした

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