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緋色side 「母さん。相談があるんだけど」 「どうした?」 「萌葱と部屋を別にしたい」 「え?どうしたの?何かあった?」 「卒業したらこの家を出るでしょ?だから独り暮らしの練習をしたいの」 「そうなの?緋色用の部屋は元々用意してたからそれは問題ないよ」 「うん。ありがとう。バタバタしちゃうと疲れて帰ってきた萌葱に悪いから今のうちに荷物移動しちゃうね」 「手伝う」 「うん」 そうして俺の荷物は全て移動させた。 萌葱は今日は元々仕事で学校自体も休んでいた。帰りも遅いって言ってたから今日しかないと思った。 気持ちの断捨離をする…全て捨てる… それから萌葱と一緒になっても話し掛けなくしたし顔も見ないようにした。 苦しくて苦しくて部屋に戻っては涙してた 「好きなのに…」 気持ちはやっぱり捨てられなくて…結局思いを忘れることは早々に諦めた。 心が無理なら体を…そう思ってすれ違うことも極力避けるようにした。 そうやって数日、何度も話しかけようとしてくれる萌葱を完全に無視して聞こえない振りをし続けた。 痛いけどこれを越えたらもう姿さえも見えないところへ行く… 大学では歴史文学を学ぶ予定だった。そして大学生活が落ち着いたら行くつもりだったギリシャへ行くことは決めてた…その時間が少し早まっただけ… ギリシャは歴史的な建物も多い。多くの神秘的な場所がある… でも夜を迎えれば変貌を遂げる。治安は決していい場所ではない。どこかで殺されたらこのどうしようもない思いは消える? 正直もう全てどうでもよくなってた。 遠い土地で萌葱を思い続けて生きるのは苦しいことばかりだろう。でも愛しているから幸せになってほしい。でも俺じゃ幸せにはしてあげられないから…だったら…姿を消した方がいい…何も言わず… 萌葱は始めは傷付くだろう…でもきっと時間がたてば他にいい人に出会えるはず。 その相手が緑なのか他の相手なのか…正直考えたくもないけど… 萌葱のため…萌葱のためなんだ…毎日自分に言い聞かせて…時が経つのを只管待った。 凄く凄く長い時間に感じた。これまではあんなに早く過ぎていってたのに…おかしいね…

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