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緋色side ギリシャについてから目まぐるしく時は過ぎていった 約束した通り両親や兄弟たちには毎日連絡をした…萌葱からの連絡は全て拒否設定をした。萌葱が呆れて他に一緒に生きていく人を見つけるためなら俺は悪魔にだってなれる。きっと今頃泣いてるかもな…でも俺に愛想つかしてくれれば…悲しいけどきっと幸せを掴めるよね… そうして数年…これだけ時間がたった今でも俺は前に進めないままで萌葱を思い続けている…自分で拒否したくせに…何て女々しいんだろう… 萌葱の活躍は海を越えてこっちにまで届くようになってた。 画面を通してみる萌葱は昔よりずっと綺麗になった。 まだ恋人はいないみたい。ねぇ…まだ俺のこと思ってくれてるって自惚れてもいい? どうせ二人で生きる道なんて一生無いんだけど… リンリン 部屋の呼び鈴が鳴った。この時間に来るのはあいつしかいない 「緋色!こんばんは」 「アポロ…何時だと思ってんの?」 「えぇ?泊めてよぉ」 「またリズが嫉妬するよ」 「いいのぉ!それが嬉しいの」 アポロはこっちの会社で一緒になった人。右も左もわからない状態でようやく見つけた仕事。日本人は俺一人。始めはみんなに敬遠されてたけどアポロのお陰で今は生きやすくなった アポロにはリズと言う婚約者がいて才色兼備。その言葉そのままの人 『リズー!今日も緋色のとこ泊まってくる!』 『はぁ!また!!ちょっと!!緋色に変わりなさい』 『もしもし。ごめんね。緋色…』 『いいよ。リズ。大丈夫?ちゃんと鍵かけて寝てね』 『わかってるわよ。子供じゃないんだから。ごめんね。じゃあおやすみ』 『おやすみ』 電話を切ると既にアポロはソファーで眠ってた 「ったく…しょうがないな…」 毛布をかけてやって寝室へ向かった。 翌朝珍しく母から連絡が来た 『おはよぉ。緋色』 『うん。おはよ。どうしたの?』 『今度紅がそっちで仕事あるんだって。せっかくだから会いたいって言ってたけど聞いてる?』 『うん。聞いてる』 『俺も茜も一緒に行くから』 『は?子供たちどうすんの?』 『連れていくよ』 『うちそんな泊まれないよ』 『うん。だから近くのホテル取ろうと思ってるの。その日休みでしょ?一緒にご飯食べて観光案内してくれない?』 『いいよぉ。萌葱はくんの?』 『萌葱は仕事で今年オフないみたい。』 『相変わらずなんだね』 『ごめんね。本当は一緒に行きたいんだけど』 『仕事だから無理させらんないでしょ。なら気を付けてきてよね』 「緋色ー!おはよぉ!誰と電話ぁ?」 アポロが起きてきて首に巻き付く。寝起きはいつもこんなんだ 『誰?恋人?』 『そうでぇーす』 母の質問に答える前に勝手に電話を奪って勝手に答えるアポロから奪い返す 『ちがうから』 『まぁ仲良くねぇ』 『違うからね!』 『ふふ…じゃあね』 『ちょっ!…あーあ…』 「誰だったの?」 「親だよ。もう!勘違いされたじゃんか」 「ごめんごめん!!ちゃんと今度説明するから」 「ったく…もう!!早く帰れ!」 「はぁーい!また後でねぇ」 「はぁ…」 家からアポロを追い出してため息をつく でも… 「これでよかったかもしれない…」 恋人と同棲してるって萌葱に伝わるだろう。そうしたら…萌葱は先に進むはずだから…このままで…いっか… 「あぁ!もう…俺…女々しい」 溢れてきた涙を拭って仕事の準備をする。いつもの1日が始まった

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