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なんて…
…本当はマネージャーからその店の名前を聞いた瞬間からみやびさんに会いに行くって決めてた。無性にその人に会いたかった
緋色と数年連絡も取れなくてどうしていいのかわかんなくて…その上恋人の存在を知って…
この苦しさを他の誰かと過ごすことで一瞬でも忘れたい…だからその店を使ってみようか…ここ数ヶ月そう思っていたんだ…
でも俺のイメージ上そういう場所を使ってもいいものなのか?そう葛藤していたこのタイミングでマネージャーから勧められた。
初めてあの写真を見せてもらったときから本当はすごくすごく会いたかったんだと思う。あのときは意地になって直ぐに連絡したいのを必死で耐えてた。実は先輩から聞いた店の番号をこっそり登録してて何度も画面上にその店の番号を出しては消してを繰り返して…だから…俺は…
緊張しながら連絡をして到着するのを待った
『こんばんは。malice de l'ange みやびです』
インターフォン越しに聞こえてくる声は高くもなく低くもなくとても心地いい感じの声。
「今開けるね」
扉を開けてそこにいたのは思ったよりも小柄で思ってた以上に綺麗な顔立ちの人だった。きゅっと胸が鳴った。
「初めまして。よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
淡々と説明してくれる姿を見つめた
「コースはどうしますか?」
ん~…社長から貰った金額を考えたら一番長いコースにしても余ってしまうくらい。でも社長は本当に三海さんを怒っちゃいそうだからとりあえず一番長いコースにしてみることにした
「じゃあ…540分で」
「オーナーに確認します」
『お疲れ様です。オーナー。540行けますか?
……わかりました……はい』
電話切りにこりと微笑んでこちらに戻ってきた
「大丈夫だそうです」
「無理させちゃいました?」
人気であろう彼には次の予約が入ってたのかもしれない。なんだか申し訳無いけれど彼の笑顔がその思いを絶ちきってくれた
「ふふ…大丈夫ですよ。木築さん」
「はい」
「緊張していますか?」
「えぇ…初めてなんです…こういうの使うの…だから…正直どうしたらいいかわかんなくて」
「そうなんですね。大丈夫ですよ。」
「あの…みやびさん」
「はい」
「えと…実は…俺…童貞非処女なんです」
別言わなくていいことだろうに何を話していいのかわかんなくてそう発してしまっていた。
「そうですか。女性じゃなくて良かった?」
きっと童貞を捨てたいからと思われたのかもしれない。不安そうにそう質問される。ただみやびさんに会ってみたかった。それをどう伝えるのか。もう自分の中でワケわかんなくて
「みやびさんのこと…実は先輩に写真見せてもらって…ずっと会いたかったんです…みやびさんがいいです」
無意識にそう発してた
「ふふ…ご期待に添えるよう頑張りますね」
この人…可愛い…花のような笑顔に見惚れた
「みやびさん…」
でも…何か…
「はい」
「えと…」
敬語がなんだか心苦しい…
「俺タメなんで敬語じゃなくていいです。むしろ…その方がいいなぁ…って…」
「うん。わかった。大丈夫だよ。そんなに緊張しないで。ね?」
すぐに受け入れてくれて安堵した。
終始ニコニコしてるから少しずつ緊張もほぐれていった。
この人と過ごすこの空間は優しくて息が楽にできる。
無理しなくていい…俺が俺のままでいられる…すごく心地いい…
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