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いきなりプレイを要求されるかと思っていたのだろうけど俺は別にヤりたくてここに来たんじゃない。あなたに会いたかった。話したかった。同世代の子と無理しない素のままの俺を受け入れてもらって一緒に過ごしたかった。 その裏では少しでも緋色を忘れたい…できればこの人が運命の人であって欲しいって思いも見え隠れしているけど…。結局緋色の代わりにしようとしてる?俺最低じゃん… 俺は普通に普通の人でいられる場所が欲しいだけ。 自分で望んだ場所であるこの業界。そうだったはずのこのきらびやかな世界では息がうまく出来ないんだ… 「萌葱。いいの?僕のこと抱かなくて…」 最もな疑問だろう。でも俺はヤりたいわけじゃないんだ…ダメなのかな?そういうことしないとならないのかな? 俺は同世代の子達が遊んでいた場所。あのときあまりいけなかった場所を巡ってみたいんだけど…。 「みやび…えっと…あの…これから外に一緒に出掛けてくれる?」 「別に構わないよ。マネージャーさんから許可はもらってるの?」 「うん。大丈夫。マネージャーにたまには遊べって言われてここを教えて貰ったから」 「そうだったんだね。じゃあ出掛けようか。指定の服はある?」 外に出るときはお客の好みに合わせて数種類の衣装が用意されているのだろう。でも俺は普通の友達として過ごしたいんだ。だから… 「いや。みやびの普段着でいい」 「うん。わかった。ちょっと着替えてくるから待ってて」 オーナーさんに外に行く連絡をしているようだ。それはそうだろう。何かあれば困るだろうから。その間にマネージャーにも一応連絡をしたら自由にしていいって言われた。 マンションのエントランスで待ち合わせすることになったので着替えを終え戻ってくるみやびをぼんやり待ってた。 みやびは想像以上にいい人だった。綺麗でかわいくて。気さくで柔らかくて…でも…何か抱えてそうだったな…気のせい?わかんない。みやびのことだけ考えるようにしてたら呼ばれた 「お待たせ。どこ行く?」 私服は至ってシンプル。細身の体に良く似合った格好だった。可愛いなぁ… 「普通に買い物とかゲーセンとか行きたい 俺ね双子なんだけど色々あって普通の学生みたいなことしたことないんだ」 「そうだったんだ」 「うん、まぁその頃の色々で…学生時代の友人とは誰一人として会ってもないし出掛けたりもしない。業界の人だと俺のイメージって言うのがあるから気は抜けなくて…だからこうして同世代の子と遊べることが嬉しい」 そうして俺が行きたかったところにひたすら付き合って貰った。こんなに楽しかったのは久しぶりだった。沢山笑えた。 案外外に出ると気が付かれないものなんだな。誰も話しかけては来なかったから。まぁ。一応メガネとウィッグはつけてるけどね 「萌葱が楽しいのなら良かった。もう暗くなったねぇ。これからどうする?どこかで食事でもいいし部屋に戻ってもいいよ」 暫く手料理食べてなかった。俺は料理だけはあまりしたことないから… 「ご飯一緒に作りたい!」 そんなわがまま通る?不安げに聞いたら快くOKしてくれた 「わかった。じゃあスーパー寄って帰ろ」

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