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男はみやびの言葉に腹を立てたのかギリギリと細い腕を握る
「痛い!離して!ちょっと!待って」
それをどうにか引き剥がし再度男を見据えた
「何なの?邪魔しないで。僕たち急いでるから」
思った以上の剣幕にたじろぎ後退る男。それでも俺を諦めようとしなかった
「じゃあ萌葱だけ貸してよ」
こいつにとってはただの気まぐれだろうがもう2度と誰にも抱かれたくない…
「やだよ。萌葱からその汚い手を離して!」
みやびがさっきよりも低い声で男に詰め寄る
「随分気の強いお姫様だな。萌葱。へたれなお前によくお似合いだな」
そうなのかもしれない…だってこんなにも…震えてる…
「はぁ?あんた何いってるの?萌葱はそんなに弱い子じゃない!」
庇ってくれるみやびに驚く
「へぇ…この子にもまだあの事話してないんでしょ?俺が代わりに話してあげる。」
そんなこと…聞いたらみやびはどう思う?気持ち悪がられる?それは…やだ…
「やめろ!」
「お姫様。こいつね双子の弟に犯されたことあるんだよ。その時のこいつすげー喜んでたの」
「ちがっ…!」
あぁ…もう…終わった…みやびに軽蔑されるのだろう…苦しくて俯く…せっかく楽しかったのに…仲良くなれそうだったのに…でも俺の予想とは違う言葉が発せられた
「だから何?それでも前を向いて歩いてる萌葱は強い。終わったこといつまでも引き摺ってそれを持ち出すあんたたちの方が弱い!」
「萌葱。 俺たちに付き合わないならあのデータ世間に流してもいいよな」
「OK…そこまでだよ。これ、脅しだよね?」
「だからなんだよ」
どこからか黒い服のガタイのいい男たちが取り押さえる
「君たち。十分にお灸を据えてもらうんだね。行こう!萌葱」
何が起こったのかわからなくてただ手を引かれるままにマンションへ戻ってきた
扉を閉めると力が抜けてその場にしゃがみ込んでしまった。そんな自分が情けなくて…悔しくて…せっかくの時間を邪魔されたことが申し訳なくて…
「ごめん…みやび…」
でもみやびは柔らかく笑って抱き締めてくれた
「頑張ったね。ほら。あっちいこ。ね?」
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