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「萌葱。僕を抱く?」 その言葉にごくりと喉をならす いや…待てよ…そうしたいのは山々なんだけど…俺… 「僕に初めてを頂戴」 …どうしよう…すごく…可愛い…自身がどんどん硬度を増していっているのがわかる 「…っ…」 「だめ?」 いやいや…そうじゃなくて… 「俺…やり方あんまりわかんない」 抱く側は初めてだ…空雅を大変な目に合わせちゃうかもしれない…鼓動はどんどん早くなるのに… 「僕が教えてあげる。抵抗があるのなら無理はしなくてもいいんだよ」 その妖艶な瞳と唇。発された言葉に少し嫌悪感…仕事だから…?そんなの…嫌だ… 「…そうやって…いつも誘ってるの?」 「そうだね。プライベートではね。でもここではほとんど初めてだよ。信じてもらえるかわかんないけど」 「そっか」 仕事ではしない行動なんだ…そう思うと何だか特別になれた気がしてホッとする 「抱かれるんじゃなくて抱くことで少しでも萌葱が嫌なこと忘れられたらって…僕は思ってるの」 そう思ってくれてるんだ…俺の苦しみを緩和したくて?確かに一理あるのだろう。それにもう俺は…緋色のことさよならするんだ…だから… 「じゃあ…俺の初めてを貰って…緋色を…忘れさせて?」 「うん」 あの頃緋色がしてくれたみたいにそっと空雅をベッドへ横たえ愛撫を始める。 緋色の残したを軌跡を辿ることで心の整理をしようと… 大好きな緋色…緋色の気持ちは本物だったよね?きっと何か理由があったんでしょ?でも緋色は別々になる道を選んだ…俺に進んでほしいからなんでしょ? でも…たった今さよならするって…決めたはずだったけど…空雅を愛撫していくことで緋色の想いが次々と自分の中に入ってきた気がした… あぁ…やっぱり忘れられるわけないな…そう自分を嘲笑しつつ目の前の空雅を良くしてあげようってその手は止めなかった きっと…俺は…将来他の誰かと結婚したって緋色以上に思える人ではないのだろう…その人には申し訳ないけれど…薄っぺらい感情のまま、ただ笑って過ごしていくのだろう… その相手は空雅がいい…空雅は…手放したくないなんて…すごくすごく身勝手な思いを抱いてる。 空雅だったら緋色の代わりとして遜色ないし本当の自分を受け入れてくれてるし緋色のこと思っている俺にも何も言わない…。凄く最低だなって自分でもわかってる。空雅は空雅であって緋色ではないのだから…でも…お願い…空雅…俺の側からいなくならないで…ずっと隣にいて… 初めて重なりあう俺たちの影。ゆっくりと律動しながら只管求めた。

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