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「迷い?ですか?」
空雅は不安そうに俺を見つめた…何?何が不安なの?どうして?俺は空雅のことが…そう思って手を伸ばそうとするけれど父の鋭い視線と母の強い眼差しによりそれは制止された
「…萌葱悪いけど席外してくれない?少し空雅君と二人で話したい」
何を言ってるの?どういうつもりなの?
「何言ってんの?」
「萌葱。いいよね」
言葉を飲み込んだ。これ以上逆らえない何かに縛られたように動けなかった
「萌葱。おいで」
父に促されて席を立つ。空雅と母の視線が刺さるけれど振り返ることは出来なかった
「父さん…どういうつもり?」
「…萌葱お前の空雅くんに対する思いは本当?」
「当たり前でしょ?」
「じゃあどうしておとなしくついてきた?」
「それは…父さんが…」
「もし俺なら…本当に好いているならどんな手を使ってでもそこに止まる」
「何が言いたいの?」
「それと…こっち」
つれてこられた先は個室になっている席。そこの扉を躊躇なく開ける
「何やってんの?勝手に…」
「お待たせ…」
え?…何?どう言うこと?何で?
「…萌葱…」
そこには泣きそうな顔をした…
会いたくて会いたくて夢にまでみた俺の片割れ…
俺が唯一愛した人…
「緋色…」
そこにいたのは紛れもない緋色だった。
「萌葱、緋色」
「「はい…」」
「お前たちはこの先どう歩んでいく?ここで気持ちをちゃんと切る?それとも…
二人で話して決めるんだ。」
「…久しぶり…だね…萌葱…」
「…何で…何で勝手にいなくなったりしたの?」
「ごめん…」
「何で?」
好きだ…好きで好きで堪らないんだ…どうしたって緋色より好きになれる人なんて現れないんだ…ねぇ。緋色は?緋色は違うの?恋人がいるって聞いてた…その人と一緒に過ごしてるって聞いてた…ねぇ…俺はどうすればいい?
この時俺の中にはすでに空雅の存在はぼやけてしまって緋色との思い出だけが色濃くそこに存在してた…
あんなに濃密な関係だった空雅をこの一瞬で…人としておかしい…どうかしてる…わかってる…そんなのわかってるのに…止められなかった
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