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「会いたかった…会いたかったよ…緋色…」 「…俺も…会いたかった…」 「でも!でもお前恋人いるって…」 「いない。母さんの勘違いだよ」 「じゃあ…」 「俺はずっとお前だけが好き。お前以外とどうこうなりたいと思ったことはない…お前は違ったみたいだけどね」 「だって…俺は…お前には…恋人が…だから…諦めなきゃって…思って…」 「そうだね。そう仕向けたのは俺だ…でも…でも!!やっぱり嫌だった…苦しかった…耐えられなかった…萌葱が俺じゃない誰かと一緒に生きてるなんて耐えられなかった…だから…父さんと母さんに話した。すべて話した。そして今日ここへきた」 「緋色…」 「空雅くんがどんな子なのかも知ってる…さっき姿もみた。とても綺麗な儚げな子だった。俺とは全然違う…あの子がいい子なのも父さんに聞いた…俺が無理言って空雅くんのこも調べてもらったから…あの子がどんな思いでお前の側にいるのかも何となく感じた…」 「俺…俺は…空雅のことは大切で…でも緋色に対するそれとは明らかに違って…でも…空雅は俺のこと好きでいてくれてる気がして…」 「空雅くんのその好意はそういうものなのかな?」 「どういうこと?」 「だって…お前見てるときの空雅くんは俺がお前を見てたときのそれと違う…」 「そんな…」 実は感じてた…たぶん空雅は俺のことをそういった意味の好きってわけじゃないって… おそらく初めて体を繋げた日…あの日はおそらくそれだった。 でも実は迷いがあることにも気がついてた。他の人を思い出しているだろうことにも気付いてた だからその人を考えて欲しくなくて…俺だけを見ていて欲しくてかなり強引にいろいろやってきた。それはもう…酷いことだってした…空雅を雁字搦めに縛り付けた 空雅に捨てられるのが怖かった… 本当に…俺って…我が儘で…自分は緋色をまだ好きでいるのに…また緋色と一緒にいたいと思っているのに…空雅にも俺の側にいて欲しいなんて…本当に傲慢で…自分勝手だ…

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