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緋色side
萌葱と黙って別れて数年。家族がうちにやって来た。
相変わらずな両親と兄弟たち。そこに萌葱の姿はない…萌葱が相変わらず忙しいのも今日はこれないのも前以て聞いていたけれどやっぱり寂しかった
「さすが緋色。綺麗にしてるね」
「なかなか帰れないしね。」
「今日は恋人は?」
「ん?あぁ…」
本当はシラを切り通すつもりだった…けどやっぱり嫌で…
「あのときのは友人だよ。結婚を控えている人。今日ここに来たいって言ってた。俺の家族に会いたいって言ってたから招待したよ。もう来る」
タイミングよくベルがなる
「アポロ。リズ。いらっしゃい」
二人を紹介してみんなで小さなパーティーをしてみんなを見送った
見送った後ソファーに掛け息をはく…
紅ねぇの言葉が俺の頭の中を支配していた
「そういえば萌葱恋人と一緒に住み始めたみたいよ」
そのときは笑って祝福したはずだけど…俺自身こうなることを望んでいたはずだったんだけど…
一人になるとモヤモヤと俺の中をどす黒い何かが這い上がって
「萌葱は…誰にも渡さない…」
自分でも驚くくらい酷く低い掠れた声が出た
それに俺自身が驚いたのと同時に結局本当はどうしたかったのか?明確になった瞬間だった。
それからすぐ父にこれまでの俺たちの思いを話した。
それから必死にお願いして萌葱の相手を調べてもらった。どんなやつが萌葱を奪ったのか?本当に萌葱の意思でそいつと一緒にいるのか?
萌葱はもう俺のことなんてどうでもよくなってしまったのか?そいつのことが俺より大切なのか?
…相手のことが全てわかるまでに結構な時間を要した。
気が付けばあれから更に一年ほどが過ぎていた
「緋色。お前一度帰国して相手にあってみないか?」
父からの提案に暫く考え頷いた。会社は長期で休みをもらった。このまま場合によっては退職する予定だ。
もう…逃げない…ちゃんと終わらせる…これからの俺の身の振り方を考える。
会って突然消えたことをちゃんと謝って…それから俺の思いを伝える…
そこで萌葱が俺でなく相手を選ぶのなら…考えたくはないがそれはもう…
俺への罰だと…
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