64 / 356

アルバイト

「あ…茜くん。この子が無理矢理私を…助けて…」 茜がこちらを一瞥する 「ちがう!!俺は…何も…」 茜が言葉を制する 「それは申し訳ございませんでした。こちらのものにはしっかり言い聞かせますので…許して頂けませんか?」 「…っ…じゃあ…送って?家まで…」 「茜っ…俺っ…」 「かしこまりました。参りましょうか」 茜は俺に背を向けその人の肩を抱きながら去っていく 俺はそこで動けないままその姿を見送っていた どうして…茜…俺… 「あれー?さなえ。どしたの?もう帰ったかと思っ…さなえ?」 「俺…何で…俺何もしてないのに…」 「さなえ。一先ず店戻るぞ」 店に戻ると暖かい飲み物を出してくれた 「何があった?」 「…っ…俺っ…」 先程の出来事を店長に話す 「すいません…俺」 「お前何も悪くないじゃん。茜だってわかってるはずだぞ」 「でもっ…茜は…何も…何も聞いてくれなかった…女の人と一緒にいっちゃった…どうしよぉ…また…っ…」 …もう誰にも触って欲しくないって言ったのに…それなのに…抱くの? 「大丈夫だって。茜はそういうやつじゃないだろ…」 「でも、っ…」 その日茜は帰らなかった…

ともだちにシェアしよう!