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俺が俺でなくなる
幸せな日々。
いい家族。いい友人。いいバイト仲間。
一緒にバカやって笑いあって。そんな何気ない毎日
あんなに嫌いだった。
嫌だと思っていた茜と今こうしていっしょに並んで歩いてることだって…
誰よりも大切で狂おしいほど好きで好きで…
この先もずっとずっと隣にいられると思っていた。
隣にいられることを疑いもしなかった
何にもかわらない。
こんな普通のことがとても幸せなんだって気づいてなかった
茜との関係も他の人との関係も。
そして冬休み。店は年末年始は休みなので実家に戻ってきた
とはいえ特に何をするわけでもなくただだらだら過ごす
その毎日でさえとても幸せなんだって思いもしなかった
今日は茜と初詣に来ていた。普通に参拝して普通に帰る。
帰るはずだったのに…
ほんの一瞬のことだった。大勢の人に俺は流され茜から離れてしまった
今日に限って俺はスマホを実家に忘れてしまったから茜と連絡の取りようがない
仕方なく神社の入口で待つことにした
絶えず行き交う人々の群。それをただただ見詰めていた
人が多過ぎてなかなか茜が出てこない。
「さなえ!」
茜?いや違う…
誰かに呼ばれてる。はじめて聞く声?いや…どこか懐かしさも感じる声…でも…誰?
声のする方に目を凝らしたがそこには見知らぬ人。でも俺を見据えて俺を呼んでいる
「誰?」
何でもない本当に普通の疑問
それなのにそれにはその人は答えず急に俺に抱きつく…
「え?ちょっと…誰ですか?」
「お母さんよ」
「え…?」
頭を何かでガンっと強く殴られたような衝撃が襲う。
目の前が真っ暗になった
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