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俺が俺でなくなる 茜side
冬休みで店も年末年始は休みだからさなえと一緒に帰省していた
年末はさなえの家で過ごして翌日さなえと二人で初詣にきていた
願うことはこれからもずっとさなえといられますように…ただそれだけ
俺たちが来ている神社はこの辺りでは1つしかないためみんなが押し寄せる。
田舎の割りには人が多い。
行列が出来るほどだ
ほんの一瞬の出来事だった。一瞬手が離れただけ。掴もうと手を伸ばすが空を切った
人混みにさなえが流されて行ってしまった。
俺は逆方向に流される。どんどんどんどん出来る距離に不安が襲う。
外まで行けばさなえは待ってくれている。
そのはずなのに胸騒ぎがした。
それを振り払うように頭を振った
大丈夫…大丈夫…さなえは大丈夫…
出来る限り急いで向かっていると呼び止められた
「茜くん!」
一度寝たことのあるさなえを狙っていた女。
気持ち悪い…離れたい…それなのに人混みのせいで早く動けなくて呆気なく女に捕まる
媚びたような目が気持ち悪い鼻をつく甘い匂いが気持ち悪い。
「離して。俺急いでるから」
それなのに女は俺の腕に絡み付き離れようとしなかった。
無視してそのまま引き摺るように歩く
「ねぇ。うざい。本当に離して」
その時すれ違う人に押され女が俺の胸に飛び込んできた。
それを突き飛ばし何とか走り出す
気持ち悪い…気持ち悪い…早く…早くさなえを抱き締めたい
ようやくたどり着いたときさなえの姿は無かった。
あまりにも遅いから先に帰ってしまったんだろうか?
足早に家路を急ぐ。
しかしさなえの家にも俺の家にもさなえは戻ってきていなかった…
さなえ…どこ…
「茜くん!」
近所を歩き回っているとさっきの女がやってくる。
「茜くん待って!」
「何?」
「ねぇ。今日さなえくん鳥居の所で見たんだ。誰か待ってるようだったから茜くんのことかもって思って懐かしくて暫く見ていたの」
「…」
「そしたら女の人が鳥居の側でさなえくんに急に抱き付いてきて…だから待ってるの彼女さんだったのかな?って思って離れようとしたときさなえくん倒れちゃって。駆け寄ろうとしたんだけどガタイいい男の人が今度は来て倒れたさなえくんとその女の人車に乗せて運んで行ったんだ」
「は?それいつ!?」
「茜くんと神社で会った少し前…だから30分くらい。さなえくんのこと心配だったんだけど何もできなくて。気になったけど知り合いが介抱してくれただけなのかもしれないって考えてたら私も連れがきたの。だから中に来た。そしたら一人の茜くん見つけて…やっぱりさなえくんが待っていたのは茜くんだったんだと思ったら急に怖くなっちゃって…それを伝えたかったからさっきはしつこく着いてきちゃったんだけど…ごめんね?」
「わかった。どっちに行った?」
女にお礼をいい走り出す。みのりさんに車を出してもらって探す。
30分ほどでどの辺りまでいける?
いくつもいくつも考えて。でも…
さなえと会えることは無かった
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