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俺が俺でなくなる
体が重い…俺…どうしたんだっけ…
ゆっくり目を開けるとどこかのマンションの一室だった
服もちゃんと着てるし拘束もされていない。
それなのに体が全く動かせないでいた
「おはよう。さなえ」
「誰?」
「お母さんよ。ずっと探していたの」
確かに俺の母親と言われればわからなくもない。
だって俺にどことなく似ていたから
でも俺の母はこの人じゃない
「人違いですよ」
「離れている間よっぽど酷いことをされたのね。そうよね。私と無理矢理離されたのだから」
言っている意味が全くわからない。困惑しその人を見る
「起きたのか?」
今度は違う誰かがやって来た。とてもガタイのいい男。
でもとても優しそうな人
「大丈夫かい?」
その人が俺を優しく撫でた
「本当…そっくりだな」
「でしょ。すごく会いたかったの。でもね会わせてくれなかったわ」
「俺…帰らないと…茜が待ってる」
「茜くん?それなら綺麗な女の子と仲良くホテルに入っていったわよ。とてもお似合いの二人だったわ。邪魔しちゃ悪いわよ」
「は?そんなはずない」
「そう?間違いないはずだけどな。ほら」
そこには仲睦まじく体を寄せ笑顔を見せる茜の姿。相手は見えないけれど女にしては背が高くて細身の女
でも…何か違和感がある
「それでも俺は帰らないと。バイトも始まるから。介抱してくれてありがとうございました。」
「大丈夫よ。バイトも学校も辞める手続き終わっているから」
「は?」
「あなたは私の息子よ。会えなかった分だけたっぷり一緒に過ごしましょう。ね。さなえ…」
そういうとその女は俺に深いキスをした。
「止めてください」
「可愛い息子…大きくなったわね」
聞いてない?
「あの…帰してください」
何度も伝えると先程まで微笑んでいた顔が歪む。
そして…
思い切り殴られた
「どうして?こんなにもあなたを愛しているのに」
そういうと何度も何度も殴りかかる。
体が動かないのでされるままになる
さっきの男はもうここにはいなくて
女が疲れるまで殴られ続け体が痛い
やっと殴るのをやめたのは男が戻ってきてから
男は母と名乗るそいつを部屋から連れ出し暫くすると戻ってきた
「うわ…痛そう…ごめんねぇ…大丈夫?」
男が手当てをしてくれた
「あの…俺…」
「彼女は君の母親。それは紛れもない事実だよ」
「え?」
「記憶なくなっちゃってるんだね。聞いていたけれどここまでとはね」
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