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俺が俺でなくなる
告げられる一つ一つは俺の記憶のどこにも無いもの
「最近になって彼女がまた君に会いたいっていいはじめて今日は本当にたまたま見掛けたから思わず声をかけてしまったんだろうね」
「俺…俺は…俺の母は薊で俺の父はみのりで弟と妹がいて。俺の母は…違う…違う…」
男がまた頭を撫でている。
「俺は何があったのかは知らない。でも忘れてしまったということは…君の中で彼女の存在は大きな傷になってしまったのだろうね」
「みんなに…会いたい…」
「ごめん。それは出来ない」
「どうして?」
「ごめん」
「俺は…どうしたってあの人のことを母なんて思えない…」
「そうだよね」
「家に…帰りたい…」
「ごめんね…」
毎日その繰り返し。母という人に可愛がられていたと思ったら急に殴られてそして暫くすると男が助けてくれる。
どうせなら…殴られる前に助けて欲しい…
体が動かない原因はわかった。
母と呼ばれる人に色々な手を使って薬を飲まされているみたいだ
ずっと同じ体勢は辛いだろうと男が向きを代えてくれたりする。
「ねぇ。俺はいつ帰れるの?」
「ごめんね」
どうせ答えは帰ってこない
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