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彼氏が美少年に声をかけられたら ②
「あー、ごめんね。恋人いるからそういうのは無理かな」
隠しカメラで見ていた純はずっと不機嫌で、男の子の問いに内心ヒヤヒヤしていたが、即答した正和の言葉に目を瞠る。少しくらい迷ったりするものだと思ったのに意外だったのだ。
「あ、じゃあ今日はその人と一緒に……?」
「うん。今トイレに……そういえば遅いな」
「じゃあ、連絡先だけでも――」
「ごめんね」
正和はニコリと愛想笑いを浮かべると、心配した様子でトイレの方へ歩き出したので、純も慌てて正和の元へ戻った。
「あ、純。どこ行ってたの? 心配したよ」
「……正和さん、他の人の体触ったでしょ?」
「え……いや、触ったっていうか、日焼け止め塗ってって頼まれて……塗っただけだけど……」
一部始終を見ていた純は、歯切れの悪い返答をする正和をじとーっと睨みつける。
「楽しそうだったじゃん」
「……見てたの?」
「うん」
「…………全部?」
「うん」
焦った様子の正和は背中に冷や汗をかきながら、純の手を両手で握って哀願するように眉尻を下げた。
「純~、ごめんって。でも食事の誘いはちゃんと断ったよ」
「当たり前じゃん。……正和さんってすぐ目移りするよね」
純は拗ねた様子で怒り、正和は純の手をぎゅっと握って、ひたすら謝る。
「~~っ、ごめん。ごめんって。怒らないで。もうしないから」
「俺が同じことしたら絶対怒るくせに」
「じゅん~。お願い、許して。今日はもう純しか見ないから」
「――今日は?」
「っ……これからは純しか見ないように、努力するから……」
「断言はしないんだ」
「そんな冷たい言い方しないでよ。あーいうのもこれからはちゃんと全部断るから……ごめんね」
正和は珍しくしおらしい態度で純に頭を下げ、それに気を良くした純は、ビーチベッドに俯せで寝そべった。
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