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第2話 世界の話

――……昔々、この世界は常に光の者と闇の者が熾烈な戦いを繰り広げていた。 お互いに向ける強い負の感情は融合する事無く絡まり、膨れ、あらゆる物を飲み込んで常に奪い合っていた。 そして遂に雌雄が決した。 勝利したのは"光"。 しかし、闇の者は諦めていなかった。 ゆっくりと極秘に闇のあらゆる存在の"能力"を凝縮した存在を創り上げ、それを光の姫の生誕祝いに……友愛の証として贈ったのだ。 程無くして贈られた闇の者は姫の教育係……そして、"恋人"として密かに姫と"繋がる"様になった。 姫と同じ肉欲の悦びを共有する一方で、闇の者はゆっくり己を滲み込ませる、"内部支配"の感覚に酷く魂がふるえた。 求められるままに幾度も姫の中に己を放ち、それに浸る。 光も闇もお互いに甘美な悦びに浸りながら、その本質は全く違うものだった。 そうする内に姫の中で闇が光を喰らい、複雑に絡まり溶け、新たな存在が出来上がった。 ……そう。 この『新たな存在』こそが闇の者達の狙いだったのだ。 光の姫の中から生まれた、複雑で圧倒的暴力を有した男性体の"闇"。 そして、世界は"闇"で溢れた。 闇は光を覆い、撥ね退け、食い散らかして"極夜"を何百、何千、何億……厭きる位、一切光を許さなかった。 光の繁殖を防ぐ為に世界から姫と同性の力弱い"女性体"を次々消し、容赦しなかった。 その冷徹な手段は男性体は強い力で抵抗してくるので、上手く消せない為の女性体発見時の絶対的な処置だった。 そうする一方で、闇は唯一の性として先ずは『新たな存在』を基に、自らを新たな"アルファ"性としてつくりかえた。 それからそれに添わせる存在を、これまた長い年月をかけて新たに創り上げた。 特別な男性体、"オメガ"性の誕生である。 しかし密かに機会を窺っていた小さな男性体の光が、生まれたばかりの"白"に近いオメガと融合し、乗っ取り、光はそれを一気に増やした。 それから"器"の中で闇は血の繋がりで本来の力を呼び覚まそうと躍起になり、小さな光はそれを抑えようと奮闘した。 その結果、光の者の中で、 始まりの器の性質を強く持つものをアルファ性とし、この者は素早く様々な高い能力を得る事が出来るが闇に染まり易くなり、 最初に光が入り込んだオメガ性が強い者は身体も処々の力も大変弱いが、アルファを闇から戻す絶対の力を得た。 そしてやがて、力はアルファには遠く及ばないがオメガより強く、"戻す"力は無いが一切闇化しない器のベータ性が生まれた。 こうして闇はアルファ同士のみで繁殖し、光は以前と形は違えど、それぞれの組み合わせの二性で柔軟に繁殖し始めた。 そして息を吹き返した光は裏切りの闇を滅しようとし、未だ世界を支配する闇は己を強いる光を再び飲み込もうとした。 ―…………多少の真偽や誇張が見られるが、これがこの世界の始まりの物語であり、その戦いは今でも続いている。 光と闇が二度交わったのは遥か遠い過去の話で、現在の光と闇は過去の素振りを見せる事無く、敵対しながらも平行線で世界は続いている。 今でも無限の延長線上で、世界は日常として人々はこの"話し"を受け入れて生活しているのである。 そう……未来へ伸びる直線が僅かでも傾かなければ、交わる事の無い、必要以上に干渉しない世界。 ――……僅かでも傾かなければ…… 僅かでも……

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