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第7話 EP1:愛引 真夜中の準備室 -1-

検診が終わって、処々の事を済ませた夜中、僕は寝ているリュンの肩を揺すった。 「―……リュン、今から僕と"確かめて"、対策考えよう? 良い?」 「うん、いーよ、ミトナ……」 「それじゃ、準備室行こう? あそこなら……色々揃っているから……」 騎士団相手の"薬"のメンバーに僕とリュンは入っているし、……こういう事は早めに解決した方が良いよね? それに準備室を選んだのには理由がある。 準備室は色々揃っているし、いつでも利用が自由なんだ。 ……なのは、とっても便利なんだけど、ザッと確認してみた感じやっぱりと言うか、「受け手」側の物しか揃ってない様な……。 リュンの確認には、なるべく同じ条件にする為に"ペニス挿入"が必要なんだ。 「…………」 そこで二つ問題が……。 僕、が、リュンに……しないと……だよね? あと、さすがに"ゴム"……が必要だと、思うんだ……。 中に出さなきゃ……っていう考えもあるけど、不安だし……。 あー! 僕のバカバカ!! 街に行ける日より前に騎士団が来るからって、焦りすぎたよ!!! 「ミトナ……?」 動きを止めて黙って立つ僕に、リュンが不安そうに声を掛けて来た。 そして僕が「大丈夫」とリュンに声を返そうとした時、突然部屋の扉が開かれた。 ……この部屋、鍵が無いんだよ……。 「―……ここのツートップがこんな夜中に、どうしてこの部屋に?」 「ミーファ……」 「…………悩んでいるのは、ミトナ? リュン? 両方? 必要なら、僕が何か"力"になるよ」 「…………」 そこに立っていたのはミーファで、僕達の格好を見てあえて"悩み"と聞いてきたみたいだ。 だって僕達は腰布一枚で、ローションやタオル等を持って、部屋の広いソファーはまるで致す準備の様で……。 基本オメガは"受け手"が大多数だ。……そりゃ、僕の両親の様にオメガ同士も居るけど、かなり少数……。 そして僕とリュンはオメガ……。僕もリュンも完璧受け側なのはミーファは知っている。 だけど、奥のソファーのそれを否定する力を放っている。 ……どうしようか……なぁ……。 「……話し、聞いてくれる……?」 何とリュン自らミーファに自分の悩みを……。 そしてミーファは「聞くよ」と言うと、ベッドもどきのソファーに僕達を連れて行き、『ミーファ・リュン・僕』の順で座らせるとリュンの頭を撫でて話しを要求してきた。 リュンは……顔を真っ赤にしながら、必死にミーファに…… "定期検診"でハーモスさんに挿入されると、とても乱れて大して弄られてないペニスから潮吹きやオシッコが簡単に出てしまう。 治療行為の時の方が激しいのに、一度もそう言う事は起きた事が無い。 ……と、羞恥心に耐えながら説明して、どうしてそうなるのか確認するつもりで僕とこの部屋にいたと話し終えた。 まぁ、僕も凄く感じてしまうとミーファに伝えた。 そしてミーファは話しを聞き終えて、少し考えてから口を開いたのだけど……。 「……ちょっとハードな話しをするけど……。あ、これは"秘密"ね?」 え? ハードな秘密話し? そして僕とリュンが頷いてから、ミーファも頷き、話しを再開させた。 「僕は君達みたく、有る意味"望んで"ここに居る訳じゃない」 「ミーファ?」 「……僕は"救われて"……"恩返しの為"に、ここに居るんだ」 言いながら、僕達から視線を外して……何だか"遠く"を見ている錯覚が起きた。 「……僕ね、ここに来る前は"部屋持ちの男娼"してたんだ。……アルファやベータ……たまにオメガの人達から、結構可愛がってもらえたんだよ?」 「!」 「ふふ……。それにね、"部屋持ち"ってね、お金を出してもらえれば"薬"役もするんだ」 それは……少し聞いた事がある……。 でも、ミーファの過去の話は……初めてだ……。 「―……でも、僕……妊娠しちゃって、さ。 アルファの人の赤ちゃん……、僕みたいなのが産んじゃ駄目だって……」 「……!」 そうか! だからミーファの身体が"柔らかい"んだ……! オメガはね、一回でも"妊娠"すると身体が柔らかくなるんだ。 でもその言い回し……。ミーファ……! 僕は思わず胸の前で手を強く握った。 どこかに力を集中させないと、グシャグシャに泣いてしまいそうだったから……。 「……そしたら、ここの所長さんが僕をここの"薬"役に誘ってくれたんだ」 「所長が?」 「彼ね、僕のお客さんだったんだ。 それにね、ここで安全に薬役を二年間すれば、"今までの身分は関係無くなる"って……言って、くれて……」 当時を思い出したのか、一瞬泣きそうになった顔をミーファは両手で覆い隠しながら話を続けてくれた。 覆われた顔の表情は分からないけど、彼の声は確りしていて、とても落ち着いていた。 「……何度も告白されて……頷いたその日に、即行で無理矢理身請けを完了させてここに……」 ……そうだったのか……。所長……すごく真面目そうな締まっている表情の下で、ミーファにぞっこんメロメロなのか。 「今のところ、僕は"恩"を返し終ったら……所長さんと強制番化をして、たくさん赤ちゃん作る約束を……しているんだ」 言いながら顔を覆うのを止め、頬を染めて首輪を撫でて微笑むミーファは綺麗でとても幸せそう。 確かにミーファの管理官は所長がしてた。 ……でも、何でこの話しを……? 「―……だからね、たまにオメガに後ろからシて欲しいって人もいたから、僕は"出来る"よ。ふふっ」 「え……?」 「それにね、"ゴム"もあるし?」 そう言ってミーファはポケットから扇状に未開封のゴムの袋を広げ、その奥で"ニヤリ"と笑みを作った。 「街に買い物に行くでしょ? その時に買って、所長といつでも出来る様に、こうして常備してるんだ~」 ミ――ファ―――――!!! 「でも、所長はやっぱり真面目でさ? 昼夜問わずに誘ってもなかなか減らないんだよ……もっと新商品とかも試したいのに~」 ファ―――――!!!? 「でね、所長限定、所長専用で用意してるんだけど、今回は特別にリュンに使うよ。……僕とシてみる?」 「……!!」 あ……。今、リュンが息を呑んだ……。 「この新作の使う?」 ゴムの一つをリュンの目の前で振り、微笑むミーファにリュンは……――……手を伸ばした。

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