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第14話 EP1:愛引 鐘が鳴る -2-

そしてクライム様は僕と早速街に行く事にしてくれた。 街へは"馬"で行く事になり、僕はクライム様の立派な愛馬に乗せてもらった。 ……と、言っても、乗馬は初めてなのでクライム様の前に座り、抱きかかえられる様な乗り方だ。 安定するけど、とってもドキドキしてしまう! うぁあぁ……。 腹部に回された手と、背中に感じるクライム様の存在感に、嬉しいやら恥ずかしいやらで、顔が真っ赤で熱い。いっそ外套のフードを深く被っていたい。 しかも、クライム様は今は騎士様の甲冑姿ではない。 白いシャツに濃い灰色のズボン、濃茶の皮のミドルブーツに横留めの腰くらいの長さの二重の濃紺の外套……。 腰には一応、騎士の証が付いている小振りの剣を帯剣している。 「ミトナ」 「ふぃぁい!」 ……う……。僕の返事にクライム様が少し笑った気がした。 緊張するとカミカミの舌っ足らずな傾向にあるのか、僕は……。がくり。 そして僕が「う~う~」と小さく呻いていると、また"くすり"とした笑いが……。 クライム様はそんな僕を一度引き寄せ、馬上での具合を確認してから「では、行くか」と街へ出発した。 正直クライム様の手綱捌きは流石と言った感じで、ポクポクとスムースに街へ着いた。 初めてで慣れてないせいで少しお尻が痛く感じたけど、少し歩いたらそれも無くなった。 街を歩いていると、何組かの騎士様と仲間のオメガが来ていた。 遠目に見て、お互い笑顔で話してたり、歩いていたり……なかなか良い感じ……。 僕とクライム様も、"良い感じ"に周りから見られないかなぁ……。 ―……ぐ…… 「!」 「……手を……離れない様に……」 「はい、クライム様……」 手! コレなら僕達……!! み、見える……かな? ああ、クライム様はそんな気は無いと思うけど、僕……嬉しいです! そして僕の中に生まれた、白と黒の感情。 白は心を満たしたくて、黒は身体を満たしたくなる。 ……もうね、自覚しました。 僕はクライム様に一目惚れしてしまったんだ。 何だか分からないけど、"出会ってしまった"んだ。 運命? クライム様が、僕の"運命の番"なら……嬉し過ぎる。 僕はそう感じ始めたけど、クライム様は僕にどんな感情を抱いてくれた? さて、テクテクと街の市場に行き、色々な露店を見て回る。 クライム様は市場の規模が予想より大きかったみたいで、何だか嬉しそうだった。 ふわふわと見て回る姿で感じたのだが、どうやら色んな事に興味を持つタイプの様だ。 そしてクライム様はお酒を扱っている所から、僕は分からないけど珍しい物が有ったらしく、嬉しそうに買っていた。 クライム様が気に入るのが有って良かった。 そんな事を考えてニコニコしていたら、隣りの露店の親父さんにクライム様が声を掛けられた。 どうやら店は装飾品を売っていうるらしく、様々な髪留めが綺麗に並んでいた。 店主は僕の横でタンゴに纏めて先を流している髪に目を付け、クライム様に髪留めを勧め始めた。 クライム様の後ろからそっと並んでいる商品を見る。 見ると髪留め系統がメインの店らしく、種類も色も素材も豊富だ。 好みで雰囲気が良さそうなのが何点かあり、僕は後で自分で買おうと物色しているとクライム様の手が動いた。 何とレインボウ色の大小のラインストーンが並んでいるゴールドのヘアコームを僕のトウモロコシ色の髪の毛の当て、具合を見始めたのだ。 このラインストーンは見る角度や光りの加減で七色に光る特殊な強化ガラスを、最高のカッティングで仕上げているものだと、店主はペラペラ情報を披露して来た。 クライム様は「ほぉ?」と感心する様な声色を出し、僕を見ているけどこの言葉は僕にか店主にか……。僕だったら、嬉しいな。 似た雰囲気の物をと数個当て、クライム様はその中の一つを僕の髪に挿した。 ダンゴの上に突然七色の煌くラインが生まれた。 僕は驚いて視線を思わず見えない髪留めへ動かした。 だ、だって……何? 突然、何? 何??? 「この髪留めが一番似合っている。店主、このまま貰おうか」 ……お菓子や果物……ここのアルファの騎士様達に貰った事はあったけど、こうした……装飾品……"残る"物を貰ったのは初めてだ。 言われた店主は「ありがとう御座います!」と笑顔で答え、僕に「これで拭いて手入れされると良いでしょう」と柔らかな布が入っている箱を包んで渡してくれた。 僕は驚きの連続で、「クライム様、あの……?」しか口に出せず、"くすり"と小さく笑われた。 その笑いは、僕の姿を小ばかにしたものではなく、何だかむず痒く……温かいものだった。 「ミトナに似合っているし、プレゼントしたくなったんだ。貰ってくれないか?」 「~~~~! ……ハイ、い、イタダキマス……。ありがとう御座います……大事にします」 クライム様にそんな……! はぅ!! こんな僕にプレゼントだなんて……! 本当に、本当に大事にします!!!!

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