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第15話 EP1:愛引 鐘が鳴る -3-

「それでは、そろそろお昼にしないか」 感動に浸って内心大絶叫している僕に、クライム様が更に笑みを深めて提案してくれた。 お昼はどんなお店が良いかな……。 僕が気に入っているお店は何件かあるけど、クライム様を連れて行くとなると、何だか違う気がする……。 肉、卵、魚……野菜? 何をメインにしようか。 チラリとクライム様を仰ぎ見る。 背が高くて、ガッチリした体躯……。やっぱ、肉……かなぁ? んー……でも、選べないや……。そうだ。こういう時は…… 「ワンプレートの色々美味しいお店なんですけど、如何でしょうか?」 「ほう?」 そして僕とクライム様は市場から出て、目的の店へ向かった。 時間帯がそれなだけに、店内は込み始めていた。 給仕に人に「二人」と告げると、丁度空いていたみたいで僕達は直ぐに通された。 そして机に置いてある魔石を操作してメニュー表を呼び出し、パラリと開いた。 「ここはワンプレートに最高五品までを好きに選んで頼めるんです。何が良いですか? 色々ありますよ」 そう……ここは肉、魚、卵……パスタやライス、パン、サラダにフルーツ、スイーツ……を、好きに組み合わせられるのだ。 もちろん、セットメニューや季節モノ、日替わりもある。言うと、かなりの種類がある。飲み物は別だ。 そして値段は各々違うため、合計金額となる。 頼む時は、机に備え付けてある魔石パネルをセルフで操作して待っていると、奥から持ってくる仕組みになっている。 向かい合わせのクライム様と少し前屈みになって、好きにプレートを選んだ。 僕はフレッシュトマトの冷製パスタと、ツナとアボガドのクリームパスタ、季節のサラダ、蟹クリームコロッケと焼きプリン。 クライム様はローストビーフにエビチリ、季節のサラダ、ガーリックパンとセサミパン。 ドリンクはお互いコーヒーをブラックで。 サービスで置かれるレモン水を飲んでいたら、頼んだ料理が運ばれてきてお互い食べ始めた。 食べ始めるとクライム様は「美味しい。別なのも試したくなるな」と言ってくれて、僕は素直に嬉しくなった。 そして和やかに食事を終え、手を繋いで再び市場に戻りプラプラした。 何だか他人の視線を多く感じるけど、僕は気にしないでクライム様との時間を楽しんだ。 そして、時間は有限なので…… 「―……今日はクライム様と街に来れて、楽しかったです」 僅かに空が朱に染まり始めた頃、僕とクライム様は街から施設へ戻る事にした。 行きと同じポクポクと馬に揺られ、僕は前方を見ながら後方のクライム様に話し掛けた。 クライム様との距離、少しは縮められただろうか? ああ……このまま、僕を今回の"薬役"として選んでくれないかな? ……正直、クライム様の口から「別なオメガを試したい」と言われるのが怖い……。 そうしたら、クライム様から離れないといけない……。 決定権はアルファの騎士様にあるのだ。 そんな事を考えていたら、クライム様の手に力が篭り、"ぐっ"と後方に引き寄せられた。 僕はその力のままにクライム様と密着し、深く抱え込まれた事に驚いた。 しかし、もっと驚く事が…… 「……ミトナ、良ければ……俺の、治療相手に……なってもらえないだろうか? 他の誰かにミトナが薬役として就くのは耐えられないし、俺は君以外、考えられない……」 「!!」 ……夢……。僕の都合の良い夢、とかじゃないよね!? 「ミトナ……? 嫌……か?」 頭上からの少し掠れて不安げな声に、意識が"ここ"に戻った。 声の方を振り返れば、少し八の字眉のクライム様……。 そ、そんな……そんな表情、僕相手に作ってくれるんですか!? きゅんきゅんして、僕の方がそういう表情で……嬉しくて泣いてしまいそうです! 「よ、よ、ょ、よろ、喜んで……!」 そして僕は身体を支える彼の手の上に素早く自分のを重ねながら、妄想で勝手に花を撒き散らし、何個も何個も何個も教会の鐘を派手に鳴らした。

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