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第16話 EP1:愛引 運命、とは / クライム視点 -1-

―……『誰か』、を相手にするのは悪いが正直面倒だと思っていた。 「枯れてる。捻くれてる」 「……うるさい、ゼク」 俺の考えに一々横槍を入れてくる、見習い騎士時代からのアルファの友人……親友。悪友。 ……入団した場所も同じだし、第三騎士団は一人の団長と二人の副団長からなり、ゼクも俺と同じ役職……"副団長"だ。 これは……ある意味、相棒? なのか? だが、副団長は第一と第二に分かれており、第一は俺だ。ちなみに決定権の強さは俺にある。 「その髪型と髭面も良くない。お先真っ暗で何も見えない」 「ほっとけ、ゼク」 髪の毛は適当に切って、髭は自然なモッサリ・ナチュラル派。 「モテる顔してるのに、もったいない」 「お前の方がモテるだろ」 「お前とは方向が違うんだよ。……度合いは……同じ位? なぁ、お前、この一年で告白はどの位受けた?」 「……さぁな。こんな姿でも告白してくれる相手が……謎でしょうがな……」 「それはお前! 催し事で"ちゃんとなる"お前の素顔がレアな上に、綺麗に整ってるからだろーが。相手はちゃんと分かっているんだよ! お前こそ、自分の価値を分かれよ!?」 「そ、そうか……」 ゼクの謎の勢いに押されて思わず身体を離したら、開いた分より詰められた。近い!! 「そうだぞ! 意中の相手……一番は護りたくなる可愛らしいオメガだが、背中を預けたくなる程の麗しいアルファが現れた時、自分の隣りに直ぐに置けないのは辛いぞ! いいか、クライム、見た目九割! 更に一目惚れ同士は別れ難いんだからな!」 「一目惚れが別れ難い? 何でだ? 後出しジャンケン状態じゃないか?」 「あんなー……惚れた弱み、ってか……"許しちゃう"んろうなぁ……何となく。あと、俺らには……"運命の番"……特別な存在が居るだろ?」 「ん? ああ……」 「それって、どんな感じなんだろうな……。一目惚れとは違う感じなのかな……」 椅子に深く座り、顎を引いて睨む様な上目のゼク。この男にしては珍しい表情だな……。 「……確か、団長がそうだろ? 一緒にいると、"芳しい匂いで、心が満たされてく"って話だ」 「ああ……身体の相性もバッチリで、心も満たされるなんて、やっぱり最高の存在だな……」 「団長は"俺の嫁、最強!! 歩くマイナスイオン!!"って、妙な嫁自慢がすげぇじゃないか」 「その浮かれはー、団長限定でしょーが」 「まぁ、"運命"だからな……出逢う確立も奇跡らしいし、嬉しいんだろ。妊娠出産以外では常に連れ歩きたい位にさ?」 現に機動部隊の第三騎士団には"番枠"ってのがあって、団長はオメガの奥方と行動を共にしている。 この『番枠』は、番、番候補、恋人関係……が事前申請で使える、特別な決まりだ。 まぁ、基本この第三騎士は"フリー"でいる事が求められる。 団内部でもこれを利用するのは主に役持ちだ。 第三騎士は一応騎士枠だが、他の団に比べて貴族外が多く移り変わり激しかったりする。 希少アルファで構成されていても、ピンキリなんだ。 まぁ、その分実戦経験と"力"はどの団より強く傾いているからな。 「……今度行く、国境の視察、"激しい"んだろ? 団長は嫁さんと息子ちゃん連れて、大丈夫か?」 「ああ。ここ最近、頻繁に闇族が光のアルファを狙っているのは知っているよな? そこの騎士団から、"闇族の気配が濃い"と報告を受けている」 厄介な……。 「……太古創世のアルファの再生か超越思想……かぁ……」 本当、厄介だな……。 「……自分と同じ闇族のアルファとあらゆる魔族を掛け合わせている内に、俺らの方にも興味が湧いてきたんだろ……」 「闇族は"アルファ同士"しか、掛け合わせられないからか? ハイブリット・イリーガルは"交配"じゃなくて、"融合"だもんな」 奴等のそのマッドでロマンチックな研究に、深い溜息が出て来る。 "アルファ"な時点で可能性が出て来るからな……。 「……まぁな……。……光属性と闇属性が上手く合わさったら、"それ"はどんな存在になるんだろうな」 「さぁ……? "新人類"誕生? とか?」 「ふん……それこそ望んでいる"超越したアルファ"だろ。厄介な……」 お互い憎んでいる相手からの、突然変異は要らないんだ。 「……ああ、そうだ。次の任務での"薬"の事だが……団長はいつも通り"薬"は嫁さんで、同行すると言われている。 他の……番候補や恋人の居る者は連れて行くか、どうかだな。毎度思うが、規模でかいよなぁ……。 あとは近くのオメガの薬効研究施設に頼んである。宿泊もそこだ」 「そうか。……なぁ、クライム? 今度向かう施設、綺麗どころオメガが多いって評判だぞ」 「……だから?」 「お前の面倒臭がりも治しちまう、魅力的なオメガが居るかもしれんだろ! "薬"役だけに!」 「……………………はぁ……」 「た、溜息!?」 「ははっ……。下らない冗談はそこまでにして、視察の事を話し合おう。終わらないと、今日中に帰れないぞ」 「ぅいーす」 そこで俺は用意しておいた、軽食のサンドイッチに齧りついた。 白身がプリプリとした歯ごたえのあるタマゴサンドを咀嚼しながら、清書前の書類を点検する。 大丈夫なら、清書を頼んで、俺かゼクがサインして団長に提出。 「……ところで何で毎回団長は息子ちゃんを連れて来るんだ?」 「ああ。それな……。何でも、"運命の番"はどこに潜んでいるか分からないからだと。見つけて欲しいのだそうだ」 「へぇ!? ……だって、息子ちゃんはまだ……二次性徴が出てない……だろ? 団長と奥さんから考えると、アルファかオメガ……ってのは分かるけどさ……」 「まだ四歳だからな。団長は自分と同じアルファだと踏んでいるそうだ」 「ん~~~? まぁ、そうかもなァ。他の子より身体能力高いもんな。サル並みだ。あ、ハムサンドもらぃ~」 そう。まだアルファかオメガ分からないが、あの身体能力はアルファだろう。 二次性徴……確認は十歳前後で行われるから、確定まで六年はある。 ……しかし、まだ分からない段階で"運命の番"か判断出来るか謎だが、同時にこの世界の現状を見せて回っている……と考えれば、団長の考えも……まぁ、あり、かな……と俺は考えている。 「……ゼクはどうなんだ? 運命が良いのか?」 「オレェ? 俺は……あんま拘らないよ。本当の俺を、裏表無く愛してくれる子が、俺の運命ちゃん」 そう言ってブルーベリーのジャムサンドを手にしながらゼクは書類を見ている。 ゼクは俺に質問してこなかった。 俺も、それに不満等は無い。俺には分からないからだ。 『誰か』が選べない。実感が湧かない。 薬役のオメガも、同業のアルファも、俺は同じ。 でも、"運命"なら、違うのか? "運命"なら…………

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