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第3話

放課後になり、約束通り下駄箱へと急ぐ。まだ尋くんは来ていないみたい。 「ねえねえー!帰りどっかいこうよー!」 「今日は私でしょー?」 「ああ、今日無理。」 「ええええっ!なんで!?」 「うそー!さいあくー!」 やっぱりすごい人気だなあ…僕は今からあの人と帰るのか。大丈夫なのかな… 「楓。遅くなって悪い」 「う、ううん、大丈夫だよ」 「えー!?なに!?そいつと帰んの!?」 「やめなよそんなチビメガネ!」 「やだ〜!ヒロくんが穢れる〜!」 「あ…?うるせえよ、つうか下の名前で呼んでんじゃねえ。」 「うわーん!ひど〜い!!」 「どっちがひでえかよく考えろ脳なしが。楓、帰んぞ。」 「う、うんっ」 尋くんて辛辣… それから帰りの電車でも僕を守るように立ってくれて、律儀に僕の家の前まで送り届けてくれた。 「き、今日はありがとうっ!」 「ん。明日の朝、また来る。」 「えっ?」 「なに。」 「どうしてそんなことしてくれるの…?」 「あんなの見てそのままにする訳ねえだろ」 「そ、そっか…」 そうだよね、尋くんは優しいもんね… 「ん。つうか、なんで尋くん?」 「え…?」 「昔はくんなんてついてなかった。」 「あ、えと、だって尋くんは、雲の上の存在っていうか…世界がちがう人だと思ってたから…」 「……」 ちゅっ 「んっ…!?」 今、唇に唇が触れた気が… 「こんな近くにいんのに?」 「へっ…」 「そもそも、先に離れてったのお前だし…」 「そ、それはっ……」 「…じゃ。また明日な。」 「ま、またあした…」 確かに、今思えば先に離れたのは僕の方かもしれない。彼は昔から皆の注目の的だった。 それはもう人気で、その頃の僕はただそれが純粋に嬉しくて、幼馴染として誇りに思っていたんだ。 でも僕は気づいてしまった。 彼と自分の大きな差に。 中学校に上がると、なんというのだろう。ヒエラルキーが学校を支配するような、暗黙の了解。頭の良い子と悪い子、見た目の良い子と悪い子。何故かこれははっきり別れた。 すると僕の弱い心はみるみる小さくなって、彼と一緒に居てはいけないんだ。という結論だけが残った。 きっとそれからだ、僕たちに微妙な距離が生まれたのは。

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