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第6話
_______ガラガラッ
「ん?ヒロじゃん。男と来るなんて珍し…ってあれ!?楓ちゃん!?」
「ん、見てやって。」
「え!?どした!?」
「うるせえよ兄貴。」
「お、お久しぶりでしゅ…!?」
か、噛んだあ…!!!
「「ん…?」」
「みっ、見ないでえ…!!」
((かわいい…))
そんな兄弟のシンクロは梅雨知らず、
顔を隠す僕だった。
「んで、本当にどうしたわけ?」
「ちょっとな…」
「ふうん…まあだいたい分かるけどさあ」
「ごめんなさい…迷惑かけちゃって…」
「ははっ、良いんだよこんなの、保険医なんだから当たり前なんだし〜」
「っ…」
「おっと、染みた?ここ握ってていいぞ。ほれ。」
そう言って差し出される白衣の裾。
「あ、ありがとう琉(るい)にいちゃん…」
「いいえ〜」
昔から不安になると何かを握っちゃう癖。覚えててくれてたんだな…こうしてるとなんとなく、安心できる気がするんだよね…
「うしっ、終わったよ」
「あっ、ごめん服が…」
綺麗にアイロンがけされた白衣が1部だけくしゃくしゃに…
「良いんだって〜、楓ちゃん気にしすぎ!」
「う、うん…」
「あれ…?楓ちゃんメガネ外してみ?」
「へ?どうして?」
「なんか赤くなってる」
「えっ、ほんとに?」
「うん、あ!ほら!メガネのアーム部分がめり込んだんかな〜」
「あ、それはっ…」
ビンタされたからかな…とは言えないか。
「んー?どした?」
「あ、いえっ…なんでもない…」
「……そっか、しばらくメガネ禁止な」
「そ、そんなあ…!」
「なんでよ、嫌なの?」
「だ、だって…」
「良いじゃん!かわいい顔してんだから!」
「そ!そんなこと、ない!」
「え〜?俺なんか最初会った時女の子だと思っててさあ」
「ふふっ、そうだったね」
「んな〜、だから楓ちゃんって呼び慣れちゃったよ」
「懐かしいっ…」
「ははっ、ほんとにな〜。あ、帰りどうする?待ってられるなら俺送るけど。」
「え?」
反射的に尋くんの方を見てしまった。
「いい。俺居るし。」
「…そ。じゃあヒロ頼むな。」
「ん。楓、行くぞ。ほら。」
そう言って差し出された手に、僕は少し戸惑ったけど、握らないなんて選択肢はどうせないのだからと、彼の手をとった。
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