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2.不純な動機
「で? 智 はどうしたいの?」
「一緒の大学に行きたい」
「だったら野沢の地元の大学に行けばいいじゃん」
「あ、その手があったか」
「……顔可愛いけど、相変わらずおバカな」
「バカって言うな!」
クラスの友人である木下に相談したらそんなことを言われた。
可愛いという自覚はある。髪は細くてさらさら、背はあんまり伸びなかった。日に焼けると赤くなるだけの白い肌。大きめのアーモンドアイは先輩にも後輩にも美少年と言われ続けた。だからシャンプー、コンディショナーや肌ケアも気を使ってる。いずれがたいが逞しく、男らしくなればやめるつもりだが全寮制の男子校ではこういう容姿も受けるのだ。
護身術のつもりで部活は合気道、見知らぬ先輩に襲われそうになったのも一度や二度じゃない。友人や同室の野沢雅人に助けてもらったこともあるが、大体隙を見せないようにはしてきたつもりだ。
疑似恋愛ぐらいならいいがレイプはいただけない。
男子校での恋愛なんて僕みたいなのに恋して、恋した気になっちゃうというのが一般的かもしれないけど、僕は同じ部屋で雅人を見た時からずっと雅人が好きだった。最初は前髪が目にかかっていて前見づらくないのかな? と思ったけど、うっとおしそうに前髪をかき上げた時に見えた目の上のほくろが扇情的でやられてしまった。
雅人は僕とは対照的にがたいがよくてバスケ部に入っている。とはいえうちの高校のバスケ部はそれほど強くないから遠征もろくになく本人曰く「遊んでるだけだ」ということだったが、たまに覗きに行けばやたらと格好良く見えて僕はどきどきしたものだった。
「なんだよ雅人超かっこいいじゃん!」
「かっこよくないとは言ってない」
「うわ、自覚ありまくりとかむかつく~」
僕の部活は週三回だったから部活とか用事がない日はタオルとかおにぎりとか差し入れしてやったりもした。あれ、けっこう僕けなげじゃない?
ちなみにおにぎりは寮の厨房のおばちゃんと仲良くなって握ってもらったりしたものだ。僕の手作りじゃないのかって? 衛生上の問題があって厨房には入れてもらえないし寮の部屋は火気厳禁なんだよね。(それでも電気ケトルとか炊飯器とか隠し持ってる寮生はいる)
話を戻そう。どうしても雅人と同じ大学に行きたくて親に電話したら「ざけんな」と怒鳴られた。
「せめてその大学に行きたい理由について、こっちを納得させるぐらいのプレゼンができたら考えてやってもいい。ただし成績は落とすな」
「はーい……」
雅人と離れたくないからとか言ったら母親に殺されるかも。でもそれ以上の理由なんてないし。
雅人にその大学のよさを教えてもらうことにしよう。
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