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第5話 人形小豚のハスティ -5-

アルハームが店を去って数日後、新たな仲間が店にやって来た。 僕はその時、十七歳になっており、新しい子は小さい猿の獣人で九歳の男性体だった。 「ロームです……。よろひッく……おねがい、し、ましゅ……!」 顔合わせの自己紹介の時に彼が泣いているのは、捨てられた事の悲しさとこれからの不安で、僕が受けた性的な事にでは一切無かった。 そう。ロームは"普通に買われて"、ここに来たのだ。 彼のこの店の役回りは性的な事は無く、雑用……小間使いだった。 "猿"の獣人。……少し、前世を思い出させる容姿に、僕は何となく彼を目で追うようになった。 そして最初にされなくても、だんだん見えてくるここの実態にロームは困惑した様で、彼が十ニ歳のある夜に身軽な彼は木伝いに"外"に行こうとした。 僕はそれに気が付いて、慌てて僕に与えられている個人部屋にロームを連れ込んだ。 「……逃げない方が良い。殺される。……僕はそうなるのを……間接的に見せられた事がある」 「そんな……。……俺、おれ……ハスティさん……」 「うん……。大丈夫……内緒にしてあげる。まだ死にたくないなら、そのやり方でここを出て行ってはダメだ」 「―…………はい……」 僕は悲しげに立つロームから離れ、ベッドの端に座って彼を呼んだ。 「ローム、何か辛い時は夜に僕の布団においで? 何も出来ないけど、僕が居る時は抱き締めて背中を撫でて上げる」 「ハスティさん……」 ……彼は、感じていたんだと思う。 "精通"したら、"店"に出されると……。 ある夜、僕の布団に彼が滑り込んできた。 僕はいつも通り、彼を抱き締めて背中を撫でながら寝ようとしたんだ。 すると彼が僕の乳首に吸い付いてきた。 僕の乳首を口に含み、"ちうちう"と優しく吸うローム。 「……何も、出ないよ?」 「……ひってまふ……ちゅぅ……んちゅ、ちゅ……」 そう言って、ロームは僕の乳首を吸う。 僕はそんなロームの背中をゆっくり撫でる。 単純に、穏やかな時間だった。 彼は早朝、僕の布団から出て行く時、僕の頬にキスを落として黙って部屋を出る。 僕は知っていて寝た振りをし、彼の行為を受け続けた。 そして彼が精通して間もなく、僕は彼に布団の中でぎこちなく深くキスをされ、ロームに抱かれた。 唇に、乳首に、ペニスに……アナルにロームは僕に舌を這わせて舐め吸い穿り、どこから持ってきたか知らないが香油を使って僕に挿入してきた。 僕のアナルは彼をそのまま受け入れ、包んだ。そしてピリピリとした快感が僕達に広がり、お互いの腰が布団内部の闇下で揺れ始めた。 布団内部は温度の上昇が早く、僕達は抱き合いながらお互いの汗を舐めた。当然、汗の味なのだが、変に興奮した。 そしてロームは「ハスティさん、俺……」と僕に言ってきたから、僕はその唇を塞いで彼の身体に手足を回して密着を強めた。 僕の意を理解したロームは、そのまま僕の……人の内部に初めて熱い精を放った。 ロームのペニスが僕の内部で、精を吐き出す動きをしているのが分かる。僕の奥がロームの熱で温かくなる。 僕は体内で射精されている間、彼の背中に手を伸ばして、ゆっくり撫で続けた。 泣く様に身体を丸め、僕を強く抱いて射精するローム。彼は……震えていた。 僕は、その何かに耐える震えを取り除いてあげたくて、まだ小さな背中をずっと撫で続けたんだ。 この撫でが、彼の"救い"に少しでも繋がると良いなと……願いながら……。 それから間もなくしてロームは最初受け手として店に出されたが、成長が良く、攻め側で落ち着いていた。 まぁ、最初受け手側を経験して、素質や容貌に応じて変化させていく……ここでは普通の流れだ。 ……僕とロームの"夜"は、彼が"店"に出る様になって自然消滅した。 別に強制でも依存関係でも無い……。でも、寄り添った存在……。 だからか……ただ、少し……寂しいかな、と思ってしまう。 だけど僕はローム以外と、ああいう事をしたいと思わなかった。 ロームも僕も大丈夫……。そう思い、僕は"幼い夜"を宝石箱に詰めて蓋をした。

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