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第21話 Clover's March 『砂塵の薔薇 -愛情-』 -6-
そして俺は砂漠に視察に行った時に、とある物を購入した。
「アルハーム、これをお前に……"砂漠の薔薇"だ」
「砂で出来た……薔薇?」
「これが、俺の中のお前だ」
美しいが、脆い。
加工を許さないありのままの、完成された美しさ。
壊れないように、自然と護りたくなる。
……実は"砂漠の薔薇"……"デザート・ローズ"は二つ、お前と俺に用意した。
大切な者同士、ペアで持つと"良き愛のお守り"になるらしい。
……いささか少女趣味だが、こういうのは嫌いではない。俺は色々甘党なのだ。
俺はお前と"番"になりたいんだ、アルハーム。その為にも……
「……ゼイリア老……今日は奥の部屋で静かに話しをしないか?」
このサロンに来る男には、様々な事情がある……。
「……約束していた物を、用意したんだ」
「…………良いだろう。アルハーム、行くぞ」
奥の部屋を使うのは、それなりな理由がある。
「―……ゼイリア老、アルハーム、これが俺の本気だ」
そして俺は老の前に輝く金貨をビッチリ詰めた箱を二十個置いた。
「以前……指定された額だ。……俺は貴方の一番に大事にしている宝石が欲しい」
「……本当に用意したのか……」
「ああ。本気だからな。時間は掛かったが、用意した」
「…………だ、そうだ。アルハーム、ワシからヴィルムを飾る宝石になるか?」
「…………」
「……老、俺はアルハームを飾る宝石にはしない」
「…………ほぅ?」
「アルハームは、俺の心を癒す宝石になってもらうんだ」
「……ヴィルム様……!」
「なるほど……?」
老の口の端が上がり、俺を見て来た。
「飾るより、触れて癒しを……一生、俺からも与えて、アルハームからも貰いたい」
俺は老を見、アルハームに視線を移して告げた。
これは……プロポーズ……も含んだ言葉なのだが、これくらい重い気持ちをアルハームに抱いていると分かってもらう為に俺は言葉を選んだ。
俺の言葉の後、沈黙が生まれた。
アルハームは驚いた顔だが、肌の色が真っ赤になっていた……。
そしてアルハームは老から離れ、俺の隣りにちょこんと座ってもたれて来た。
老は「ふふ……」と小さく笑うと、「生涯大事にしろよ、ヴィルム。……必要な書類は後日……」と言って部屋から出て行ってしまった。
相変わらず物事をアッサリと決めていく老だ。だが、機嫌が大変良さそうなのが、犬種である彼の尾の揺れで俺は気が付いた。
獣人は"獣"の部分が裏表が無く、喜怒哀楽に素直なのだ。
俺達は許された、祝福された。
俺はアルハームを抱き寄せ、彼の頭を耳ごと何度も撫でた。
「……ヴィルム様……」
「アルハーム、俺達の家に行こう。用意したんだ」
「はい……!」
俺はその日、美しい宝石のアルハームを手に入れた。
宝石の彼は、俺の中で永遠に美しく輝き、常に俺を癒してくれるだろう。
だから、早く俺の箱に仕舞おう。
小さいが、お前の為に用意したんだ、アルハーム……
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