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第22話 Clover's March 『砂塵の薔薇 -愛情-』 -7E-
―……やや街外れの家庭菜園がそれなりに可能な、庭付きのこじんまりとした二階建て。
アルハームが知っている物とは違うが、これが今の俺の箱だ。
「……この家……は? 以前聞いたお話では……中央に近い庭付きの屋敷住まいだと……?」
「……今の俺は金が無くてな。屋敷の方は管理に金が掛かるから、手放した。
ここは……引っ越す先輩に安めに譲ってもらったんだ。まぁ、通いの家政婦は雇ったがな……」
「……?」
「早くお前を手に入れるのに夢中で……。貯まったと同時に、持ち金を殆ど老に渡してしまって……」
「…………え」
「……金が無い男は嫌か?」
「いいえ……。貴方が居れば……俺は良いです! ……元から物はあまり無いので、気になりません」
「……そうか。……良かった。しかし……結婚式までまた長そうなんだが……すまんな……」
「いつでも構いません。……だって、もう貴方と一緒に好きなだけ居れるから……」
「アルハーム……」
「花嫁修業しながら、この家で結婚式を待ってますね」
「アルハーム!」
彼の言葉に俺はその場で抱き締め、唇を深く、何度も奪った。
外がまだ明るく、ここが外だとか……考えなかった。
「これからは、俺の手の中だけで輝いてくれ、アルハーム。愛してる……」
「俺も……、愛してます……」
ここで俺はアルハームを横抱きにして、即行で二階の寝室に向かい、彼を求めた。
内装も全部整えておいて良かったと心底思った。
―……そして二つのデザート・ローズは寄り添う様に寝室に置き、今夜も俺はアルハームを強く抱き締める……
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