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第26話 Clover's March 『ユキシタの二人 -再生の季節-』 -4-
―……それから元々過保護気味だった同室者の狼と熊の視線に熱っぽさが加わり……気遣いと称する添い寝に潜む妙なスキンシップ……の多さが……怖くなった。
悪いが、狼と熊にオコジョの俺では、二人の内どちらにしても体格や力の差は歴然だろ?
それに俺はゲイだと既に自覚があったけど、二人は全然タイプじゃなかった。
ガッチリ筋肉が目立つヤツより、中肉の細そうなタイプが好きなんだ……。
第一、ガッチリ筋肉はあの寮監を思い出させて、仲間としは別に良いが、肉体関係となると正直無理だ。
そうこうしている内に、だんだん二人の手が俺の素肌を触る……這い回る様な仕草が増えてきて……。
しかも着替えまで……二人で服を脱がせる、四肢を拭いてから着せる……俺が脱いだ下着はクリーニングには出さずに交代で手揉み洗濯まで始めた時、遅いが異様さに恐怖で震えた。
俺がいくら……言うと、良い所の貴族出身だからってここまでさせない。普通に身支度は自分でやる。第一、二人は同室者で、俺の従者でもなんでもないんだ。
そしてある日、図書室に寄って司書となかなか見つからない専門書を探していた為に寮の部屋に帰るのが遅くなった時、俺は二人のこんな会話を聞いた。
「……ウィノ遅いな……。またどこかで襲われてないかな? …………付いてけば、手を繋いだり、腰に手を回したり出来たかな……?
…………あーあ……俺さぁ、出来るなら同意の上でウィノとシたい……。それで、俺のモノで喘ぐ可愛い声が聞きたい……」
「寮監の事があるからな……ウィノはまだガード固いだろ。……あのおっさん、いくらウィノが可愛いからって、本当バカな事してくれたよな。
今頃はウィノのガードも取れて、俺達と仲良くヤッてる筈だったのにさぁ?」
「全くだ。でも、着替えた身体を拭いたり、添い寝や風呂場で触れたり抱き締めても、俺らじゃ逃げないじゃないか? ……"脈"はあるのかも」
「……確かに……。……今度もうちょっと触れる箇所を増やしたりするか? 不安そうな顔が可愛いんだよな……まだ怖いんだろうなぁ……」
「なぁ……むしろ、ウィノを抱き締めて抵抗するなら動きを塞いで……"キモチイイ"事を身体に覚えさせてく、とか? 逆治療ってやつ?」
「優しくすると見せかけて、つけ込むのか? うわ、ゲスい。だが……一回は試したいかもな。ウィノの反応次第でその後も……なぁ?」
「そうそう、その後も……。ああ、ウィノ…………ヤベ。ちょ、トイレ……」
「あー……ま、早く抜いてそのギラつく面、治めてこいよ。ウィノ、帰ってくるぞー?」
「ああ、そうする……」
……衝撃だった。……同時に、血の気が引いて世界が揺らいで、吐き気がした。
そして何かが決定的に手遅れになる前に、俺は早々に転校しなければいけないと考えた。
そう……いくら、この学園が最高クラスの教育を受けられる最高の環境であろうとも、俺はもう拒絶反応しか示せず、無理なったのだ。
俺はその週末に実家に帰り、必死に両親を説得した。
両親から、「彼らはお前を真っ先に助けてくれたんだぞ……。それを、邪険にするなど……」と大変渋い対応をされた。
だが、俺は泣きながら執事長やメイド達を無視して必死に訴えた。普段なら、ありえない姿だ。
しかし、その時……俺は翌朝、寮に返された……。
ただ、馬車の中から屋敷を振り向いた先で、執事長が父親に何か訴えていた。
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