27 / 36

第27話 Clover's March 『ユキシタの二人 -再生の季節-』 -5-

それから、更に二人は凶悪に悪化していった。 俺は"凶悪"だと感じても、彼らはそういう気持ちではなく、むしろ"愛情"で、その愛情がいつしか身体を許し合う関係になると……自分達は間違っていないと真剣に、本気で思っているのだ。 とにかく、朝は全裸にされて身体を隅々まで拭く事から開始され、下着から髪の毛、獣毛部分のセットまでされ、飯はどちらかの膝に座らされて、残る方から「あーん」で食べさせられる。ちなみに飯は朝と夕は自室、昼はどこぞの空き教室……。そしてこの行為は密かに……"三人"の時に行われる。 部屋外の校舎内等の排泄時は人気の無いトイレに連れて行かれ、下半身の服を全て脱がされてから、一人で個室に入れるが扉の直ぐ近くで待機されていた。 夕食が済めば風呂だが、必ずどちらかが俺を洗い、湯に浸け、その間に残る方が下着等を手揉み……洗濯するのだ。 就寝はいつの間にかベッドをくっけられ、巨大な一塊にされ、俺を中心に並んで寝て、俺は抱き枕状態……。 撫でられたり、服を色々緩められたり……俺は寝たふりをして、何とか耐えていた。 しかし、身体を内部から温めてリラックス効果がある薄紫の謎液体でマッサージをしようと、鼻息荒く血走った目で二人が唾と飛ばしながら言い始めた時は、全力で泣き喚いて「俺、突発性隠れアレルギー持ちなんだ!!!」と訳の分からない事を言い張って布団をかぶって拒否した。 異様……異常だ。どうかしてる。これ以上は無理だ。色々、無理! 俺は翌日、二人に実家から取って来たいものがあると言い張って突然だが屋敷に帰り、再び両親に訴えた。 ここで受け入れて貰えなかったら、このまま家出しようと決めていた。 しかし、父親はあっさりと転校を決め、母親は寮の荷物はそのままに、戻らないで自宅で暫らく過ごしなさいと俺を抱き締めた。 何と、俺の様子がおかしかったのが気に成った執事長の強い訴えで、調査をしていたらしいのだ。 そして最近出始めた『ヴァイオレット・ミスト』なる無認可の合成媚薬ローションを秘密裏に学園宛に箱で大量に買った貴族がいると、父親が報告を受けたんだ。 とにかく、父親は学園に触れた"違和感"を何でも報告するように、放った者達に言っていたんだ。 まぁ……それを辿ったら、何と俺と同室の狼獣人に繋がったのだそうだ。 ……ああ、あの学園には大体貴族だから……。同室者も貴族の子息なのだ。 それが綻びの様に、急速に俺の過ごしている寮の部屋と同室者の異様さが分かってきたみたいで……。 俺を呼び寄越そうと考えていた矢先に、俺が帰宅してきたのだ。 実家に囲われ、あの異様な二人から離され、俺はこっそりと他国の学校に執事の一歳上の息子と編入、過ごした。 その後のあの二人がどうなったかは……知らない。あれから一回も会っていないし、見かけない。平和だから、そのままにしている。 俺は執事の息子に適度に護られながら比較的普通に過ごし、軍人家系なので俺も当然、自国の軍に入隊した。 軍人になるにあたり、寮監と同室者の事で夜と人との接触が怖くなり、深く眠れなくなった俺は闇に紛れて単独で活動する狙撃手を目指した。 ……結果的には無事、ヴィルム管轄の夜間メインの狙撃手になった。 しかし真っ白な容姿で夜間の活動を好む事から、皮肉な事に『ゴースト』と勝手にあだ名されてしまった。 ……別に仕事中はカモフラージュの布を被ったり、色々紛れたりするのだが、根本的な容姿から取られんだ。

ともだちにシェアしよう!