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第28話 Clover's March 『ユキシタの二人 -再生の季節-』 -6-
そして俺は"武器"がなかなか手放せなくなった。何かしら武器が身近にないと落ち着かないのだ……。
更に、他人との必要以上の接触が怖くなった……。居るのは良いんだ。"余計に触られ"なければ……。
そんな俺にロームを寄越したのは、上司のヴィルムだ。
・筋肉や威圧感が無い。
・身軽。身体能力は高い方が良い。
・家事全般が出来る。
・同性。
奴隷更生受け入れで希望を聞かれた時に、俺はこう答えた。
ヴィルムは俺の性格が素直なノークより、変に厄介だと分かっていた。
そして、五年は確り面倒をみないといけない。言うだけならタダ。
しかしヴィルムが選んだ"ローム"は、俺の希望通りの男だった。
貴族相手のアッチ方向の奴隷だったロームは見目も良く、俺は密かに心中に熱がこもるのを感じた。
正直……タイプだったのだ。俺は珍しく自分から手を出して、ロームに握手を求めた。
ロームは"ニコリ"と笑って、「宜しくお願いします、ウィノ様」と確り……両手で握り返してくれた。
俺は「ああ」とだけ答えて、俯いた。全身が熱くてしょうがなく、心音のボリュームが破壊された瞬間だった。
……自分がゲイだと自覚しているが、なかなかこういう感情を抱かない俺にしては、本当に珍しい人物だ。
だから……
「……ロームは特別だ。ロームに触られても……"手"なら、大丈夫だ。キスは驚いたけど、嫌では……ない」
「―……分かりました。……なら、ウィノ様が、俺を……触って下さい……」
「ローム……を!?」
突然の言葉に、唖然としてしまった。
「……俺の経歴は知ってますよね? "あそこ"に最初は小間使いとして買われたんで、掃除も得意なんですよ」
「……?」
「ウィノ様の悪夢は俺が掃除して、……綺麗にして上げます」
「…………」
「俺がウィノ様を触るんじゃなくて、ウィノ様が俺を好きに触るんです。
これなら、徐々にですが肌の触れ合いが出来そうですよね? 」
「しかし、ローム……」
「~~……俺は! ……大好きなウィノ様に触れたいと……常に思ってます!
でも、話しを聞いて……俺がウィノ様に触れてはダメなのだと思いました。
……ウィノ様、俺を触って……チャンスを下さい……!」
そう言って俺の言葉を重ねて遮り、真剣な表情で真摯に訴えるローム。
ローム……ローム……お前……そんな風に俺を……俺は、俺は……
撃ち抜かれた。
俺の装甲なんて、好きなお前の前ではペラペラな紙になるんだな……。
「…………ぁ、あのな? 俺も、ロームが……好きだ。……許可、する」
俺の答えに喜びの声を上げて、ロームが抱きついてきた。
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