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僕、子供じゃありません!
◆◆◆◆◆◆
朝陽が寝室を明るくして、碧の無邪気な寝顔もハッキリと見える。
ね、
眠れなかった‥‥‥。
西島は一睡も出来ず朝を迎えていたのだ。
たくさんキスをして、碧は西島の腕の中で安心したように眠ってしまい、一方‥西島は眠れなかった。
眠れるはずがない。
キスをして、興奮しまくり脳内は碧を抱きたい気持ちで溢れてて、それを我慢するのが精一杯で理性が飛びそうだった。
碧を抱きしめると甘い香りがして、その香りがまた、西島を興奮させる。
その感情と戦って朝を迎えてしまった。
碧の寝顔を見つめて、髪を撫でる。
寝顔は子供だ。いや、起きていても子供だけど。
可愛い‥‥‥たまんないな。
手を滑らせて頬に触れた。
「う‥‥‥‥ん、」
碧がぴくンと反応して目を開けた。
大きな彼の瞳に自分が映る。
自分を映す瞳は直ぐにキラキラした光を放ち、
「おはようございます。」
と照れくさそうに笑った。
「おはよう」
西島も釣られて笑う。
◆◆◆
部長‥‥‥‥
昨日、僕とキスしましたよね?
僕の夢じゃないですよね?
目を覚まして直ぐに瞳に映った西島の顔。
昨夜、キスをした記憶が鮮明に蘇り、夢ではないかと思ってしまうのだ。
あんな幸せな事が実際に起こったのだろうか?と疑ってしまう。
でも、西島の大きくて温かい手の感触が嘘ではないと言っている。
「眠れたか?」
「はい」
碧はまだ西島の腕の中で眠りたいなあ‥‥なんて、思って目を閉じる。
部長の手は魔法の手ですね。
気持ちいい‥‥‥凄く、優しいです。
ウトウト、
碧はまた眠ってしまった。
たった今、会話したのに‥‥‥
本当に子供だ。なんて西島は笑いたいのを堪えた。
まだ、仕事には時間の余裕がある。
寝かせておこうと、西島だけベッドから降りた。
もちろん、碧に朝食を作る為に。
◆◆◆◆◆◆
「一晩中、一緒におって何も無いとか、どこまでヘタレなん?」
諭吉はキッチンに立つ西島の足元で小言を言う。
「う、うるさい!」
「ニッシーは碧ば好いとおとやろ?」
改めて聞かれるといくら猫でも恥ずかしい。
「好いとおとやろ?」
答えない西島に再度聞く諭吉。
「好きじゃなきゃキスしない!」
西島は勢いで答えた。
「よう言うた!んじゃ、あとは交尾に持込むだけやな。早速、今から」
「するか!仕事だー!」
「仕事より交尾やろ?」
「な、なんでそうなる?仕事が大事なんだよ人間は」
「はあ?つまらん事言うて、時間は待ってはくれんとぞ?そいとも碧が他の雄か雌と交尾しても良かとや?特にこん前きた佐々木は要注意ぞ?碧に盛っとった」
佐々木の名前を出され西島はピクんと反応した。
そうだ佐々木。
あいつは佐藤を狙っている。
料理はもう出来ていて、後は食器に盛るだけ。
火を止めて寝室へと向かう西島に、
「ニッシー男ばみせろ!」
と声をかける諭吉だった。
寝室に入った西島は眠る碧にそっと近づく。
スヤスヤと寝息を立てて眠る碧の顔に手を伸ばす。
プニプニほっぺ‥‥‥西島は顔を近付け、耳元で
「佐藤、起きなさい。朝だぞ」
と言った。
その光景を見ていたい諭吉は思いっきりジャンプ!
ドスンと西島の背中を蹴った。
「なんば、普通に起こしよるとや!」
床に着地した諭吉は抗議。
「あ、当たり前だろ!遅刻する」
「はあ?ニッシーはほんにヘタレや!」
「う、うるさい!ヘタレ言うな!仕事なんだから仕方ないだろ」
西島は諭吉の身体を掴み持ち上げて抗議。
「何回でも言うばい!ヘタレ王子!」
「諭吉!どこでそんな言葉覚えてくるんだ!」
「どこでんよかやろ!ヘタレ王子」
ヘタレ王子にカチンとくる西島。
西島だって、碧に手を出したい。
そう!仕事休んで1日中、碧と一緒に居たい。
でも、そうはいかない。
言い返そうとした時に、
「部長‥‥‥‥諭吉と遊んでいるんですか?」
と碧の声がした。
彼の方を見るとしっかりと目を開けて西島と諭吉を見ている。
「お、おはよう。」
まさか猫と喧嘩してたなんて言えない。笑って誤魔化す。
◆◆◆◆◆◆
碧との朝食。
ニコニコして朝食をとる碧が可愛くてたまらない。
そして、昨夜のキスを思い出す。
あの可愛い唇に何度も触れた。
夢じゃないよな?俺の妄想じゃないよな?
佐藤はキスを嫌がらなかった。
むしろ、手を自分に回していた‥‥‥自惚れじゃないよな?
佐藤は俺が好き。
俺も佐藤が好き。
やばい‥‥‥顔がニヤける。
自分をじっと見ている西島の視線に気付いた碧。
ぶ、部長‥‥‥僕の顔、何かついてるのかな?
なんて、西島を見つめ返す。
そして、唇に目がいってしまった。
部長とキス‥‥‥したよね?
部長は僕にたくさんキスをしてくれた。
温かかったな。
また、したいなあキス。
碧の視線に西島も気付く。
目が互いに合って、つい‥‥照れ笑いをした。
そして、西島は碧の顔に手を伸ばす。
ドキッとする碧。もしかして、心を読まれたかな?って期待する。
「佐藤、ほっぺにご飯粒ついているよ」
が、現実はそんなもの。
西島が手を伸ばしたのはご飯粒がついていたから。
自分が考えていた事に恥ずかしくって俯く碧。
「佐藤」
名前を呼ばれ顔を上げた。
西島の顔が直ぐ近くにあり、顔を上げると唇が軽く触れた。
チュ、
一瞬だった。
「唇にケチャップついてた」
ニコっと笑う西島。
碧は、嬉しくて、わざとケチャップをつけようかとマジで考えたのだった。
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