83 / 526

僕、子供じゃありません!

◆◆◆◆◆◆ 朝陽が寝室を明るくして、碧の無邪気な寝顔もハッキリと見える。 ね、 眠れなかった‥‥‥。 西島は一睡も出来ず朝を迎えていたのだ。 たくさんキスをして、碧は西島の腕の中で安心したように眠ってしまい、一方‥西島は眠れなかった。 眠れるはずがない。 キスをして、興奮しまくり脳内は碧を抱きたい気持ちで溢れてて、それを我慢するのが精一杯で理性が飛びそうだった。 碧を抱きしめると甘い香りがして、その香りがまた、西島を興奮させる。 その感情と戦って朝を迎えてしまった。 碧の寝顔を見つめて、髪を撫でる。 寝顔は子供だ。いや、起きていても子供だけど。 可愛い‥‥‥たまんないな。 手を滑らせて頬に触れた。 「う‥‥‥‥ん、」 碧がぴくンと反応して目を開けた。 大きな彼の瞳に自分が映る。 自分を映す瞳は直ぐにキラキラした光を放ち、 「おはようございます。」 と照れくさそうに笑った。 「おはよう」 西島も釣られて笑う。 ◆◆◆ 部長‥‥‥‥ 昨日、僕とキスしましたよね? 僕の夢じゃないですよね? 目を覚まして直ぐに瞳に映った西島の顔。 昨夜、キスをした記憶が鮮明に蘇り、夢ではないかと思ってしまうのだ。 あんな幸せな事が実際に起こったのだろうか?と疑ってしまう。 でも、西島の大きくて温かい手の感触が嘘ではないと言っている。 「眠れたか?」 「はい」 碧はまだ西島の腕の中で眠りたいなあ‥‥なんて、思って目を閉じる。 部長の手は魔法の手ですね。 気持ちいい‥‥‥凄く、優しいです。 ウトウト、 碧はまた眠ってしまった。 たった今、会話したのに‥‥‥ 本当に子供だ。なんて西島は笑いたいのを堪えた。 まだ、仕事には時間の余裕がある。 寝かせておこうと、西島だけベッドから降りた。 もちろん、碧に朝食を作る為に。 ◆◆◆◆◆◆ 「一晩中、一緒におって何も無いとか、どこまでヘタレなん?」 諭吉はキッチンに立つ西島の足元で小言を言う。 「う、うるさい!」 「ニッシーは碧ば好いとおとやろ?」 改めて聞かれるといくら猫でも恥ずかしい。 「好いとおとやろ?」 答えない西島に再度聞く諭吉。 「好きじゃなきゃキスしない!」 西島は勢いで答えた。 「よう言うた!んじゃ、あとは交尾に持込むだけやな。早速、今から」 「するか!仕事だー!」 「仕事より交尾やろ?」 「な、なんでそうなる?仕事が大事なんだよ人間は」 「はあ?つまらん事言うて、時間は待ってはくれんとぞ?そいとも碧が他の雄か雌と交尾しても良かとや?特にこん前きた佐々木は要注意ぞ?碧に盛っとった」 佐々木の名前を出され西島はピクんと反応した。 そうだ佐々木。 あいつは佐藤を狙っている。 料理はもう出来ていて、後は食器に盛るだけ。 火を止めて寝室へと向かう西島に、 「ニッシー男ばみせろ!」 と声をかける諭吉だった。 寝室に入った西島は眠る碧にそっと近づく。 スヤスヤと寝息を立てて眠る碧の顔に手を伸ばす。 プニプニほっぺ‥‥‥西島は顔を近付け、耳元で 「佐藤、起きなさい。朝だぞ」 と言った。 その光景を見ていたい諭吉は思いっきりジャンプ! ドスンと西島の背中を蹴った。 「なんば、普通に起こしよるとや!」 床に着地した諭吉は抗議。 「あ、当たり前だろ!遅刻する」 「はあ?ニッシーはほんにヘタレや!」 「う、うるさい!ヘタレ言うな!仕事なんだから仕方ないだろ」 西島は諭吉の身体を掴み持ち上げて抗議。 「何回でも言うばい!ヘタレ王子!」 「諭吉!どこでそんな言葉覚えてくるんだ!」 「どこでんよかやろ!ヘタレ王子」 ヘタレ王子にカチンとくる西島。 西島だって、碧に手を出したい。 そう!仕事休んで1日中、碧と一緒に居たい。 でも、そうはいかない。 言い返そうとした時に、 「部長‥‥‥‥諭吉と遊んでいるんですか?」 と碧の声がした。 彼の方を見るとしっかりと目を開けて西島と諭吉を見ている。 「お、おはよう。」 まさか猫と喧嘩してたなんて言えない。笑って誤魔化す。 ◆◆◆◆◆◆ 碧との朝食。 ニコニコして朝食をとる碧が可愛くてたまらない。 そして、昨夜のキスを思い出す。 あの可愛い唇に何度も触れた。 夢じゃないよな?俺の妄想じゃないよな? 佐藤はキスを嫌がらなかった。 むしろ、手を自分に回していた‥‥‥自惚れじゃないよな? 佐藤は俺が好き。 俺も佐藤が好き。 やばい‥‥‥顔がニヤける。 自分をじっと見ている西島の視線に気付いた碧。 ぶ、部長‥‥‥僕の顔、何かついてるのかな? なんて、西島を見つめ返す。 そして、唇に目がいってしまった。 部長とキス‥‥‥したよね? 部長は僕にたくさんキスをしてくれた。 温かかったな。 また、したいなあキス。 碧の視線に西島も気付く。 目が互いに合って、つい‥‥照れ笑いをした。 そして、西島は碧の顔に手を伸ばす。 ドキッとする碧。もしかして、心を読まれたかな?って期待する。 「佐藤、ほっぺにご飯粒ついているよ」 が、現実はそんなもの。 西島が手を伸ばしたのはご飯粒がついていたから。 自分が考えていた事に恥ずかしくって俯く碧。 「佐藤」 名前を呼ばれ顔を上げた。 西島の顔が直ぐ近くにあり、顔を上げると唇が軽く触れた。 チュ、 一瞬だった。 「唇にケチャップついてた」 ニコっと笑う西島。 碧は、嬉しくて、わざとケチャップをつけようかとマジで考えたのだった。

ともだちにシェアしよう!