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僕、子供じゃありません 5話

◆◆◆◆◆◆ 斉藤くん、大丈夫かな? 碧は斉藤の昼食を手に医務室に来ていた。 どうせ、ランチはここで食べるから斉藤の分をと買ってきたのだ。 医務室のドアを開けると神林は留守だ。 碧は中へ入ると斉藤が寝ていると思われるカーテンが閉められているベッドの方へ向かう。 「あっ……んんっ」 声が聞こえてきた。 斉藤くん? カーテンの向こうから漏れる声。 具合悪いの?と碧は心配しながらカーテンをそっと開ける。 …………!!!!!!! 碧はカーテンを握ったまま固まる。 少し開けたカーテン向こう、斉藤が男と抱き合っていた。 シャツが開けていて男が斉藤の上にいて、彼の首筋辺りに顔を寄せている。 斉藤の横顔で相手の顔は見えなかった。 直ぐにカーテンから離れた碧。 「んん、あっ………きもちいい」 カーテンの向こうから聞こえてくる斉藤の甘い声。 さ、斉藤くん………… 碧の心臓はドクンドクン大きく脈をらうち始め、胸を押さえる。 ここにいちゃダメ! カーテンの向こうから漏れる甘い声と行為をするいやらしい音。 顔が熱くなるのを感じる。 斉藤に気付かれないようにそっと医務室を出た。 「佐藤、ちょうど良かった。今、お昼に」 医務室を出ると直ぐに西島に遭遇し、慌てる。 や、やばい!今、部長が中に入ったら……… 「ぶ、部長、今日はおく、屋上に行きましょう!」 咄嗟だった。 咄嗟に西島の腕を掴んだ。 掴まれた西島はドキンっとなる。 碧の手が自分の手を……… いつもは西島からだったものだから何だか恥ずかしい。 しかも、碧は何だか様子がおかしい。 「どうした?医務室じゃ嫌なのか?」 「た、たまには青空の下とかいいですよ」 碧はグイグイと西島の腕を引っ張り屋上へ繋がる階段へと急ぐ。 自分が西島の腕を掴んでいると気づくのはもうしばらくしてからだった。 ◆◆◆◆◆◆ 屋上に出ると真っ青な空が直ぐに目に飛び込んできた。 わあ……… 碧は空を見上げる。 屋上からなら空が近い。 なんせ地上からだとビルが邪魔をして空が見えないし、上を見上げて歩く事なんて都会に出てからは行っていなかった。 綺麗だなあ。 なんて浸っていると、「佐藤………そろそろ、手を………」 と西島の声がした。 手? しばし考えて自分の手を見ると、 きゃー! しっかりと西島の手を掴んでいる自分が居たのだ。 「わあー!す、すすすす、すみません!」 真っ赤になって直ぐに手を離した。 僕ってば部長の手を! 冷静になればはるほどに頭に血が勝手に登ってきて顔を赤く染める。 「いや、いいんだ……弁当が食べれないなって思っただけだから」 顔を真っ赤にして謝るから碧は可愛くて、ここが会社じゃなかったら抱き締めていたかも知れない。 「は、はい、そうですね。お弁当食べなきゃ」 まだ顔が火照ったままの碧はフェンス近くの長椅子に向かう。 長椅子に2人で座り、西島手作りの弁当を広げる。 「でも、急になんで屋上なんだ?」 西島の質問に碧はドッキリ! まさか、斉藤が医務室で男とエッチな事をしていたなんて言えない。 「そ、空を見たいなって」 碧は適当に言葉を選ぶ。 「空?」 西島は空を見上げる。 青いなあ………と心で呟き、あおいと言う言葉につい、反応してしまう。 碧。 「佐藤ってどうして碧って名前なんだ?」 女の子みたいな名前。 もちろん碧に似合っている。 「あ、僕が産まれた日がこんな風に晴れてて空が青かったからって親に聞きました」 「へえ、綺麗な名前なんだな碧って」 碧……西島に名前を呼ばれ、碧は飛び跳ねたいくらいに嬉しかった。 部長が僕の名前をちゃんと知っていてくれた。 ただそれだけの事も凄く嬉しくて、幸せな気持ちになれる。 もし、わがままを聞いてもらえるなら、佐藤ではなく碧と呼ばれたい。 「あ、そういえば斉藤は?」 「ゴホッ」 碧はドッキリとしてつい、咳き込む。 「わあ!大丈夫か?ほら、お茶」 咳き込む碧に慌ててペットボトルを渡す西島。 「だ、大丈夫です」 ペットボトルのお茶を口に含み、その後息を調える。 ビックリした。 斉藤くん……誰と抱き合ってたのかな? セックスをしたと神林に言っていた。きっと、その相手だ。 碧の脳裏にさっき見た光景が過る。 顔は見えなかった。 ただ、斉藤の気持ち良さそうな横顔と甘い声がチラチラとさっきから過って碧の顔をまた赤らめる。 気持ちいいって斉藤くん言ってた。 気持ちいいの? 本当に? 僕も部長とのキスは気持ち良かった。…………って、僕ってば!エッチだー! 「佐藤、大丈夫か?」 顔を赤らめて様子がおかしい碧を心配する西島。 「だ、大丈夫です」 顔を上げて………覗き込むように近くにあった西島の顔と近い事に気が付いた。 ひゃあ、部長! 「顔、赤いな……また、熱が」 碧の事情を知らない西島は彼の額に手を置く。 「あ、あの、だ、だい、大丈夫です」 恥ずかしくて後ろに仰け反ろうとして背もたれがない事に気づくがバランスを崩してしまう。 「危ない!」 西島は碧の身体を咄嗟に抱き寄せた。 西島の腕の中………碧はもう死んでもいいって思ってしまった。 部長の匂い………凄く好き。 腕の中は西島の香りでいっぱいだった。

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