89 / 526
僕、子供じゃありません 7話
◆◆◆◆◆◆
「諭吉ただいまあ」
西島と一緒に部屋に帰ってきた碧を待ち構えたように諭吉がちょこんと玄関に座っていた。
「いい子にしてた?」
「にゃーん」
碧の足元に身体を擦り寄せる諭吉。
「今日はね、また僕が作るんだよ。すごいでしょ?」
足元に擦り寄る諭吉に話し掛ける碧。
「お邪魔します」
碧はそう言って部屋へ上がる。
「にゃーん」
諭吉は碧の側をウロウロしながら奥へと一緒に行く。
そんな1人と1匹の後ろをついていく西島。
碧は声が聞えなくなってもワシに話し掛ける。
諭吉の言葉を思い出す。
本当に会話しているように見える。
碧は諭吉と話していた事を覚えているだろうか?
小さかったから無理かな?
でも、心のどこかで話していた事を覚えているから今も諭吉と話しているのかも知れない。
ただ………………
碧に返事するように鳴いていた諭吉は、
「今日もラブラブやなご両人!今日こそ、交尾すっとか?」
と言っていたのだ。
碧に聞こえなくて良かったと西島は顔をひきつらせていた。
◆◆◆◆◆
「マグロー!」
キッチンへ着くなり諭吉の雄叫び。
始まったか………、
西島は諭吉をワシ掴みし、冷蔵庫から離す。
「なんや、ニッシーまた邪魔ばしてから!わしはマグロを食べるとぞ!」
ワシ掴みされた諭吉はジタバタ暴れる。
「後からあげるから大人しくしてろ!」
「すみません、うちの諭吉が」
諭吉の代わりにペコペコと何度も頭を下げる碧。
「佐藤、諭吉捕まえておくから先に着替えておいで」
「えっ?いいんですか?僕が諭吉抱っこしときますから部長が先に」
西島に世話焼かせる訳にもいかない。
「ご飯作ってくれるんだろ?だったら佐藤が先に着替えなきゃ」
ニコッと微笑まれ碧は照れ笑いして、
「はい。着替えてきます」
と奥の部屋へと行く。
碧が奥へ行くと、
「なんや、一緒に着替えれば良かろうもん!そいか、脱がせてそのまま交尾ばせれ」
諭吉は西島にワシ掴みされたままにそんな事を言う。
「本当に交尾、交尾とうるさい!」
「ニッシーがチュウだけで満足しとるけんやろうが!大人のオスならちゃんとせんか!」
諭吉はシャーと威嚇するようにヒゲも毛も逆立てている。
「し、心配するな!」
「お?やる気出たとか?」
「人には順序ってもんがあるんだよ!猫には分からないだろうけどね」
西島はそう言うとリビングへ諭吉を降ろす。
上着には諭吉の毛がモサモサついている。
コロコロどこだっけ?
なんて、コロコロを捜し出し手に持つと、
「ニッシーそいでワシの身体ばコロコロしろさ……なんとも気持ち良かとばい」
諭吉に命令され、コロコロをするハメになった。
◆◆◆◆◆◆
碧が着替えて戻ると西島が諭吉にコロコロをしていた。
か、かわいいー!
西島が楽しそうに諭吉と戯れている。
部長!可愛いです。
本当に……いろんな部長を見る度に大好きになっていく碧だった。
ともだちにシェアしよう!