92 / 526

僕、子供じゃありません 10話

細い首筋から漂う甘い香り。 「あははは、部長くすぐったいです」 西島の息が首筋にかかり碧は笑い出す。 その反応で西島は我に返れた。 危うく首筋にキスをしそうだったのだ。 「首筋だめなのか?」 「はい、そこは昔から弱くて」 アヒルと遊びながら答える。 アヒルが似合っていて可愛い。だから、つい……… フーッと首筋に息を吹きかける。 「きゃー、部長!ダメですよダメ!あはは」 碧は首筋を押さえながら西島から逃げようとする。 可愛い反応に西島は碧の身体を後ろから掴まえ、また息を吹きかける。 「あはは、もう!部長!仕返し!」 と勢いよく振り返りバランスを崩す。 咄嗟に西島に抱き止められ、向き合うような体勢からスッポリと腕の中へ。 西島の鎖骨辺りに唇が軽く当たる。 チュッ、 自然にキスをする形になった。 はわわ、部長の身体にキスを……… 慌てた碧に、「大丈夫か?どこかぶつけた?」と優しく声をかける西島。 「いえ、……あの、部長に……キスしちゃっ……いました。」 俯く碧。 悪い事ではないが、無断でのキスだから気になった。 「いいよ、キスくらい………佐藤にならいくらでも」 っと、本音がつい出てしまい、ぎゃーっ!と叫ぶのを我慢した西島。 「ぶ、部長………」 僕にならいいんですか? キスしてもいいんですか? 碧は顔を上げて、 「僕も部長にならキスされたいです。昨日みたいにたくさん………されたいです」 思った事を言葉にした。 頑張ったよ夏姉ちゃん! 潤んだ瞳で見つめられ、くそ!その顔は反則だ佐藤め! 西島は顔を傾け碧の唇にキスをする。 ふにゃんと柔らかい碧の唇。 暫く、くっつけて離した。 碧はホワン、と幸せな気持ちになる。 もっと、したい…… 部長を感じたいです。 「部長……もっとしたいです」 碧は目を閉じる。 さ、佐藤……なんて無防備な! 自分の膝の上でキスを待つ可愛い小悪魔ちゃん。 理性がブッ飛ぶだろ! け、けしからん! 西島は碧の額や瞼、頬、に唇を押しつける。 チュッ、チュッ、っとキスの雨。 部長、もっとです! 大人のキスをください。 斉藤君みたいな大人の行為を……… たくさんキスをしても激しいキスではない。 碧は、 「ぶ、部長、僕は子供じゃないから大人のキスして下さい!」 なんて勢いで言ってしまった。 お、大人のキスう? 西島を見上げる可愛い小悪魔。 その可愛い小悪魔が大人のキスを要求している。 「ぼく…………子供じゃありません」 碧は西島に手を伸ばす。 本当はドキドキしていた。 拒まれるかも知れない。 まだ早いとか言われたら、なんてドキドキしながら西島に手を伸ばした。 碧の手は空を掴むようにヒラリと西島の鎖骨辺りへと舞い降りる。 白い蝶みたいにフワリと西島の目の前を通り過ぎた。 佐藤…………… ばか! そんな事を言ったら………俺は、 「んっ…ふっ」 碧を引き寄せ西島は唇を押し付ける。 押し付けられた唇からヌルリとした温かくて柔らかいものが碧の口内へと侵入してきた。 その行為に声を漏らしたのは碧。 ぶちょ…………うの、舌が……… 噛み付くようなキス。 絡んでくる舌に碧は戸惑ったが自分が望んだ事。 西島の首筋に両手を回した。 くちゅ、 くちゅ、………はあっ、 唾液が絡む音と互いの荒い息が浴室に響く。 西島の舌は激しく碧を求めて、彼の両手が自分の首筋に回されると碧の身体を抱きしめた。 何度も角度を変えてキスをする。 舌を絡める行為が初めての碧も西島の真似をするかのように絡ませて、………頭が真っ白になっていた。 部長、大人のキス………してるんですね僕。 西島の手を背中を滑り、細い腰を抱き寄せる。 部長、好きです! 大好きです。 言葉にしたい……… 唇が離れた瞬間、 「好きだ」 そう言ったのは碧じゃなく西島だった。 好きだ……… 耳元で聞こえた告白。 碧は、 僕も…………というつもりが、 「うわあ!さ、佐藤、な、なんで泣くんだー!」 言葉よりも先に涙が零れた。 「ご、ごめん、キス嫌だったか?」 ポロポロ涙を流す碧にオロオロする西島。 碧は首を振って、 「ち、ちが、ぼくも………ぼくも部長が好きです」 と、うわーん、と声を上げて泣き出した。 「さ、佐藤」 子供みたいに泣く碧を西島はぎゅっと抱きしめて、 「よしよし、いい子だ」 頭を撫でた。 「すき、だいすき」 西島の首筋に抱きついてワンワンなく碧。 可愛いなあっと西島はニヤニヤが止まらなかった。

ともだちにシェアしよう!