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ホットミルクに蜂蜜 3話
◆◆◆◆◆◆
「少しは落ち着いたみたいだね」
碧の目の前にマグカップが差し出された。
カップからは甘いミルクの香り。
「ありがとうございます。」
受け取って両手に持つ。
温められたミルクからたつ湯気からは蜂蜜の甘い香りもする。
フーフーと息を吹き掛け、1口飲む。
甘くて美味しい。
両手でカップを持ってホットミルクを飲む碧の姿がめちゃめちゃ可愛くて西島は密かに悶ていた。
くそ!可愛いんだよ!
しかも泣いたばかりで目の下がプクんと腫れて、可愛さ倍増。
フーフーと懸命に息を吐くのがたまらん!
髪がまだ乾いていなくて、西島はドライヤーを手にすると、碧の髪を乾かし出す。
ブオン、と音と共に温かい風がきて碧は西島の方へと振り返る。
「乾かすから真っすぐ向いて」
ニコッと微笑まれ、碧はその笑顔に照れて俯く。
温かい風と西島の手が髪に触れ、それが凄く気持ちが良くて、ホットミルクを飲みながら優しさに甘えた。
蜂蜜の甘さは西島みたいに優しい。
髪が乾くと、
「もう眠い?」
西島は碧に聞く。
いやらしい意味じゃなく、碧が少しウトウトし始めたからだ。
コクンと碧が頷くと彼の手からカップを取り、側のテーブルに置き、その後は碧を抱き上げた。
フワリと宙に浮く身体。
碧はぎゅと西島の首筋に抱きついた。
ゆっくりと碧をベッドに降ろすと一緒にベッドへと入る。
昨日までとは違う関係に変ってしまって互いに少し恥ずかしい。
碧が少し離れて横になったので、
「近くにおいで」
と手を伸ばす。
碧を引き寄せて腕枕をする西島。
「寝心地悪いかな?」
西島に聞かれ碧は首を振る。
「さっきからあまり話さないね。いつもはおしゃべりなのに」
腕枕をしている手で碧の髪を撫でた。
「だって……幸せすぎて……夢かもって……部長が……」
「碧、夢じゃないよ。それに、部長じゃ、なんか仕事しているみたいで嫌だな。千尋って呼んで」
千尋………
碧って呼ばれるたけで死にそうなのに下の名前で呼ぶなんて!
「は、恥ずかしくて」
無理に決まっている!
でも、部長って呼ぶのはやはり違うかな?
「呼んで欲しいな?」
ニコッと笑う西島。
碧の顔が真っ赤で狼狽えているのが可愛くてイジメたくなる。
「で、でも」
「呼んでくれないと明日はピーマンの肉詰めにするよ?」
「や、やです!」
あんな丸ごとのピーマンは無理!
碧は首を振る。
「じゃあ、呼んで?」
そう言われ、碧は覚悟を決めて、
「ち、ちひろ……さん」
と西島の名前を呼んだ。
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