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逃げてばかりではダメなのです 26話

◆◆◆ 「なんか、部長良い事あったのかな?」 課に戻った西島がニコニコしているようにスタッフ達には映るのだが、実際は碧がレースの下着を穿いて恥ずかしそうに仕事をしているのを見てニヤニヤしているだけだった。 「なんか、ニコニコしてますよねえ。いい感じですよね」 「ちょっと前までは気難しい顔をしてたから……折角のイケメンが台無しだなって皆で言ってたのか懐かしいですよ」 ヒソヒソと会話が続けられている。 「ちょうど、碧ちゃんと斉藤……あ、佐々木くんか、あの子らが入社してきてからだよねえ」 「あの二人の保護者みたいになってて可愛いですよね部長」 そんな会話の中、名前が出ていた星夜が西島に何か話かけて、その後ファイルで殴られていた。 「なんか、可愛い!!」 ファイルで殴っている姿は本気ではなくて、ボケに突っ込みを入れてる相方のようで微笑ましい。 「いいなあ、私も部長にファイルで叩かれたい」 女性スタッフの1人が呟く。 「やだ、なにそのドM発言」 「だって、楽しそうじゃん?私らの方が付き合い長いけど、あんな風にじゃれてくれないじゃない?羨ましいなあって」 「あー、確かにね……ちょっと前までなら飲みに気軽に誘えない感じしたから……でも、いまは気軽に誘えそうじゃない?」 「あ、じゃあ、誘ってみる?」 そんな会話がされている事に西島は気付いていない。 ◆◆◆ 「なんで、ファイルで叩くんすか?」 ファイルを叩かれた星夜は西島に文句を言っている。 「俺の手が痛いだろーが」 正論である。 「俺の頭はどうなってもいいんですか?」 「安心しろ!それ以上アホにならないから!」 ふふんと鼻先で笑われる。 「あんな良いお土産渡した俺にその態度!!」 「いいだろ?幸せなんだから?」 「あー、なんだあー!羨ましいんだあ」 途端にニヤニヤし始める星夜。 「部長もしたらいいじゃないですか?」 ヒソヒソと囁かれる。 ……考えていないわけではない。いつも、頭に過ぎる事。 「ほら、いつまでもほっとくと誰かに持っていかれますよ?」 ギクッとする言葉。若い碧はいつまでも待ってくれるのだろうか? 「逃げてないとは思いますけども、時には覚悟決める時も必要ですよ?」 ニコッと微笑まれた。 「お前は仕事に覚悟決めろ!」 西島は立ち上がり手を伸ばすと星夜にデコピンをかます。 「いってえ!!」 頭を押さえて叫ぶ星夜。 その声で碧は西島の方を見る。その時に西島と目があって、顔が赤くなった。 顔を赤くする碧を見て、くそ!!仕事早く終わらないかなあ?と思った。 今まではこんな事を仕事中に考えてなかったのになあ……なんて、思う。 覚悟を決める……。 星夜の言葉はチクリと心を刺す。 逃げてばかりではダメだと自分でも分かってはいたのだ。 逃げてはダメだと。

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