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今日がダメなら明日頑張ればいいんです。
◆◆◆
退勤の時間、星夜はさっさとタイムカードを押して帰り支度。佐々木と待ち合わせでもしているのだろう。
碧はLINEをチェックする。いつも、退勤の後どうするかを西島がLINEしてくるからだ。
スーパーに寄ろうとか、先に帰っててとか。それをチェックするのも楽しみな碧。
「西島部長、今夜空いてますか?」
女子達数人が西島に声をかけている。
「どうかした?」
上着を持ちながら答える。
「空いてるなら飲みにいきません?」
「えっ?」
それは初めての事だった。飲み会とかは会社主催のものにしか出ない。何故なら、自分から飲みに誘わなかったし、誘われる事がなかったから。
「あー、なんだよ?俺らは?」
近くに居た男性社員も数人反応している。
「来ればいいじゃん、別に」
なんて、返しているが西島はまだいくとは言っていない。
碧の耳にもその会話は聞こえていて、西島へ視線を向ける。
い、行っちゃうんですか?ちひろさん……。
飲み会反対なわけではない。部下とのコミニュケーションは大事だ。でも、誘っているのが女性だから碧は気になるのだ。
「じゃあ、君らで行くといいよ」
西島は鞄と上着を手に横をすぎる。
「えー、行かないんですか?」
「うん、ごめんね」
ニコッと微笑む。その微笑みに女子達はズキューンと撃ち抜かれる。
「いえ、大丈夫です」
誘って滅相もありません!!的な勢いで答える。
「俺、実は酒ってそんなに強くないんだ」
西島の答えに「あ、そう言えば部長って幹事やってて、食事とか飲み物とか指示して飲んでるのみた事ない」と男性社員が思い出した。
その言葉であー!!と納得。
「あー、だから飲みに誘ったり行かなかったりしてたんですね」
1人が納得しながらにいう。
「あ、じゃあ、ご飯は?」
お酒を断るとそうなるよねえ……と西島は苦笑いする。
「ごめん、それも……」
「なんですか?誰か待ってるんですか?」
ニヤニヤしながら男性社員が言う。もちろん、冗談だった。
「うん、そうなんだ……ご飯一緒に作る約束しているから……じゃあ、お疲れ様」
西島はニコッと微笑み、彼の返事にポカーンと口を開けて固まる社員達に手を振った。
碧の横を過ぎる時に「スーパーいくぞ」と声をかけた。
碧はニコッと笑顔になって、スマホをポケットに突っ込み、リュックを手に後を追う。
「部長……恋人いたの?」
「えっ?ご飯作るって……えっ?同棲してるって事?」
「えー!!嘘!!」
西島と碧が去った後の空間はかなりざわついていた。西島千尋、初のスキャンダルである。
◆◆◆
「ちひろさん、良かったんですか?」
スーパーへ急ぐ2人。
碧は自分に気を利かせてくれたのかな?と心配だった。
「何が?」
「ご飯とか……」
「俺は碧とのご飯の方が大事だからいいの!」
西島はそう言って碧に微笑んだ。
えへへ、ちひろさん。僕もちひろさんとのご飯の方が大事です。
碧は嬉しそうに笑うと西島の後をついて、スーパーへ入った。
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