131 / 526

僕の初めてを貰ってください

◆◆◆◆◆◆ 「んっ………」 西島は寝返りを打って、そのまま碧を手探りで探す。 が、碧の姿がない。 起き上がり周りを見るが近くには居ないようで、ベッドから降りると近くの時計を見て時間を確認する。 7時。 トイレかな? 西島はトイレへと向かう。 「ニッシー、碧なら自分のアパートばい」 後ろから諭吉の声。 「えっ!なんで?」 驚いて振り向く。 まさか、まだ気にして? 部屋を出て行った? 西島はかなり焦る。でも、 「今日デートなんやろ?着替えば取りに行っとーとさ」 「あっ……」 そうか、なるほど!と西島は安心した。 ◆◆◆◆◆ どうしよう! 碧はたくさんの服をクローゼットから出したまま、途方に暮れていた。 ちひろさんと初デートなのに! 興奮して朝早くに目覚めて、デート用の服を探しにアパートに戻ってきたのに……… 僕の服………みんな、子供っぽいよう!大人のちひろさんと釣り合わない。 碧が途方に暮れている理由はソレだった。 どの服も子供っぽく見える。 西島との初デートだから大人っぽく見せたい。 こんな事なら夏姉ちゃんに服を選んで貰えば良かった。 今から買いに行くのにも早い時間だし…… 「うえーん、どうしよう!」 思わず叫ぶ。 「何、騒いでんだ?」 真後ろで西島の声。 驚いて振り返ると諭吉を抱いて立っている西島がいた。 「ちひろさん……」 な、なんで? 慌てて出しまくった服を一か所に集める。 「服を選んでたのか?」 西島は碧の側にいく。 こくん、と頷く碧。 「ち、ちひろさんと初デートだもん……大人っぽくしたくて」 俯いて、恥じらう碧の姿に西島は悶えそうだった。 諭吉と一緒にアパートに来てみれば洋服をこれは違う、これも違うと何枚も広げてはため息をつく碧がいた。 自分とのデートにこんなに必死になってくれるのかと嬉しくなる。 「碧は何着ても可愛いよ。じゃあ、俺が選んでいい?」 「ほ、ほんとですか!」 碧は嬉しそうに西島を見つめる。 ああ、もう!何も着せたくなくなるじゃないか! 碧に似合うのは自分のブカブカなシャツ。 しかも下着は穿かせない。 あー、俺ってド変態! なんて考えてながら碧の服を選ぶ。 選んだのはブルーのシャツと下にランニングシャツ。それとジーンズ。 何も着せたくないけど………これが本音。 碧は名前の通りブルーが良く似合う。 「少しは大人っぽく見えますか?」 服を着て不安そうに西島を見る碧。 「なんで、そんなに大人っぽくしたいんだ?」 「だ、だって、ちひろさん大人だから……並んで歩くなら子供っぽくしたら、ちひろさんに恥かかせちゃいます!だからです。」 力説する碧の頭をつい、クシャクシャと撫で、 「馬鹿だな碧は……俺の方が碧に恥かかせないか不安なのに」 「ど、どうしてですか?」 「碧は自分の魅力に気付いてない?こんなに可愛いのにさ」 西島は碧を抱き寄せる。 顎を指先で上げると、そのまま唇を重ねる。 ちゅっ、と軽いキスを何度かして、碧を力強く抱きしめると彼の口内へ舌を挿入した。 くちゅ、くちゅ、 唾液が絡む音が碧の耳に届く。 ちひろさん……… 碧も西島の背中に両手を回す。 「んっ………ふぅ……」 舌を絡める度に碧の甘い声が部屋中に響く。 碧とのキスは甘くて好きだ。 離れたくはない………でも、 くちゅり、と音がして唇を離す。 赤い顔で西島を見上げる碧。 ああ、やばいなあ。このまま抱いてしまいそうだ。そんな感情がチラリと顔を出して焦る。 でも、今日はデートだからな。碧が凄く楽しみにしているし。 抱きたい衝動をグッ堪えて、西島は、 「服を片付けたら朝ご飯食べよう」 頭を撫でた。 ◆◆◆◆◆◆ 「諭吉、デートなんだよ!凄いでしょ?」 朝ご飯を諭吉に食べさせながら話かける。 「デートしてくるからイイ子にしてるんだよ?」 諭吉の頭を撫でた。 「にゃーん」 いってらっしゃいと諭吉は碧に返事をする。 「碧、行くぞ」 「はい!」 碧は元気に返事をして、諭吉に手を振る。 全く、ウブで困るばい……休みなら1日中交尾出来たろうに…… 諭吉はエサを食べながら、そう考えていた。 ◆◆◆◆ えへへ、デート!デート! 碧は飛び跳ねたいくらいに嬉しかった。 憧れの西島とデートとか信じられない。 碧にとっては初めてのデートが西島とだなんて飛び跳ねるだけでは足りないのだ。 あ、車……神林に借りようかな? 映画みた後にドライブでもいいしなあ。 チラリと碧をみる。 ニコニコと楽しそうに自分の横を歩く。 こんなに楽しそうなんだから、もっと楽しませたい。 付き合って初めてのデートだもんなあ。 そう悩みながら歩く西島を碧もチラチラと見ていた。 ちひろさん、カッコイイ! いつものスーツもいいけど、ラフな格好のちひろさんも凄くいいなあ。 それにちょっといつもより幼く見える。 駅で女性がチラチラと西島を見ているのに気付く。 カッコイイもんなあ、ちひろさん。 そんなちひろさんと僕は恋人同士………… きゃー、どうしよう!自慢したい! なんて、1人悶える碧であった。

ともだちにシェアしよう!