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僕の初めてを貰ってください。 14話
◆◆◆◆◆
もう一度大丈夫だと言おうと思ったけど、西島の優しさを尊重した。
尊重したけど、心の小さい場所でホッとしたのも碧自身感じていた。
パジャマを着て、寝る準備していたら、西島が何か思い出したように寝室をでる。
どうしたのかと碧は心配になり、西島の後ろをちょこちょこ着いていく。
西島はキッチンでガサゴソと袋を漁って、
「猫達にご飯与えてくるよ」
碧の方を見てニコッと笑う。
「ぼく、ぼくもいきます!」
慌てて西島の側へ近寄る。
「いいよ、碧は待ってなさい」
まだ9時くらいなのだが、碧みたいな可愛い子が夜にウロウロするのは心配だ。
「ぼくもにゃんこに会いたいです!それに、もう少し私物を欲しいから」
私物。あ、確かに十分ではない。
「分かった。一緒に行こう」
西島は碧と一緒ににゃんこに餌をやりに行く事に決めた。
玄関を出ると、いつの間にか諭吉が足元に。
いつの間に?
諭吉を見下ろすと、「にゃーん」
と鳴いた。
「ちひろさん、諭吉もいいですか?」
そう言って諭吉を抱き上げる碧。
「もちろん」
そう返事を返して、歩きだす。
西島が先に歩くから碧は小さい声で諭吉に話かける。
「僕、大人になりそこねたよ。怖くないって……思ってたのに、ちひろさんに気を使わせちゃった」
元気なく話す。
西島に我慢させてしまった。
彼を気持ち良くしてあげたくて裸にエプロンまでしたのに。
結局は西島をその気にさせて、断るという最悪な事態になってしまったのだ。
反省している。
トイレに行くとか言わなかったら今頃ベッドの上で西島に抱かれていたはず。
ため息が何度も出る。
嫌われたかな?
そんな最悪な事ばかり考えてしまう。
「碧」
道路を横切る手前で西島が立ち止まり、後ろを振り返る。
「は、はい」
慌てて返事をすると、
「ほら、手を繋ごう」
西島は碧の前に手をだす。
その手を躊躇うことなく握る碧。
少し、不安が消えた。
繋いだ西島の手は温かくて、落ち着く。
夜だから人通りが少なくて、車さえ頻繁には来ない。
手を繋いだまま、道路を渡り公園へ。
「にゃーん」
公園の猫達が近寄ってきた。
「にゃん達、ごめんね、遅くなって」
碧は諭吉をその場に下ろすと西島の持つ袋を覗く。
西島はにゃんこの元へ。
碧はにゃん兄弟に餌を与えている。
にゃんこは西島を待っていた。
少し離れた場所からじっーと見ている。
「にゃんこ、遅くなってごめんな」
西島もにゃんこに謝る。
「ニッシー、碧がへこんどるばい」
にゃんこに餌を与える西島に擦り寄りそういう諭吉。
「わかってるよ。」
西島は優しく諭吉に笑いかけた。
「碧、大人になりそこねたげな、言うとったばい」
「そんな事ないのに。碧………無理しなくて、そのままでいいのになあ」
「ニッシーば好いとおけん、無理すっとやろ?」
「俺も碧が好き。だから、無理させたくない」
「なんや、人間はメンドイばい」
諭吉はヤレヤレとため息をつく。
「メンドイのが人間なんだよ。」
西島は笑うと諭吉を撫でる。
「にゃ~」
食べ終わったにゃんこが小さく鳴く。
「ありがとうってばい」
諭吉の通訳に西島はにゃんこに微笑む。
「またな、にゃんこ」
「ニャン」
小さくまた鳴いて茂みに消えていく。
「おやすみってばい」
「うん」
西島は諭吉を抱きかかえ、碧の側による。
「私物取りに行かなくていいのか?」
「えっ?あ、はい」
猫達と遊んでいた碧は慌てて自分の部屋へと入っていく。
西島は碧の部屋をじっーと見つめて、
「やっぱ、このままじゃダメだよなあ」
と呟く。
「なんや?」
「ん?なんでもない」
諭吉にそう返すと、西島も碧の部屋へと入って行った。
◆◆◆◆◆◆
「碧……マジかあ」
「うん」
会社の男子トイレで話す碧と斉藤。
話の内容は裸エプロンしたものの、エッチはしなかった事。
結局は部屋に戻ってもセックスする事なく、一緒にベッドで寝て、朝になったのだ。
朝も西島は相変わらず碧にご飯を作り、お弁当まで。
そして、仲良く出勤した。
会社に着いて直ぐに斉藤を見つけ、トイレに連れ込んだ碧。
昨夜の話をどうしてもしたかったのだ。
「でも、裸にエプロンと………フェラはしたんだよな?」
頷く碧。
「上出来だよ!偉い偉い」
碧の頭を撫で、誉める斉藤。
本当にするとは…………これが本音。
碧って、子供みたいなのに、大胆でそして、無垢。
不思議な子だなあって感動してしまう。
「でも、でも、ちひろさんをその気にさせて……」
ぐすぐすと泣き出す碧。
「それは仕方ないだろ?碧は初めてなんだから怖くなるさ」
「でもお」
大粒の涙を浮べ斉藤を見る碧。
うわああ!!もう、碧め!無意識に可愛い仕草しやがってええ!
斉藤の着ている上着をギュッと掴み、涙目。
か、可愛すぎ!!
もう、もう!!
誘ってるのかと思うだろうが!!
これを西島部長されてんのか。
それでも襲わないってすげえ忍耐力。
「あ、碧……ほら、泣くな」
ドキドキしながら頭を撫でる。
「星夜くん」
慰められた碧は無防備に斉藤の胸に顔を埋めるのだった。
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