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僕の初めてを貰ってください。 17話
「碧に手を出したらただじゃ済まないからな」
低く威嚇するような声。
「んじゃ、つべこべ言わずにサッサと抱けよヘタレ」
「お前にとやかく言われたくないね。俺は…」
「碧ちゃんを大事に…とかダセェ台詞吐く気じゃないだろうな?碧ちゃん大事なら本人の気持ちも尊重しろよな、ヘタレちひろたん」
佐々木は肩を軽く叩くと去って行った。
追いかけて言い返すのもバカみたいだから、西島は医務室へと向かう。
◆◆◆◆
「あーおいちゃん」
医務室へ向かう途中、佐々木に声をかけられた碧。
「佐々木部長、お疲れ様です」
深々と頭を下げ挨拶をする。
「碧ちゃん、今日も可愛いねえ。今から医務室?」
頭を撫でながら聞く佐々木。
「はい。佐々木部長は………星夜くん」
斉藤と名前をウッカリ出してしまい、ちょっとヤバイかな?っと思ってしまった。
佐々木との関係を聞いたのは斉藤からだし、佐々木から聞いたわけじゃない。もしかしたら、碧に話した事を佐々木は知らないかもしれない。と心配したのだが、
「ああ、星夜に聞いてるんだっけ?」
ニコッと笑ったので安心した。
「はい。聞きました」
「そっか、そっか、碧ちゃんは西島と付き合ってるんだよねえ、良かったね。碧ちゃんは西島の事、好きだったもんね」
ヨシヨシと頭を撫でられた。
ちょっと、照れてしまう。
斉藤は友達だから、まだいいけど、佐々木は上司。
「西島って真面目だから碧ちゃん大変でしょ?」
碧の心を読むような佐々木の言葉に、
「佐々木部長は星夜くんがその気にさせたのに土壇場でトイレとかに逃げた後とか………どうしますか?怒ります?」
「えっ?」
いきなりの質問に佐々木はビックリ顔。
真剣に悩んでいたから勢いで口走ってしまったけれど、言った後に我に返った碧は、
「いえ、あの、忘れてください」
と頭を下げてその場から逃げようとした。
が、
ガッシリと腕を掴まれてしまった。
「碧ちゃん逃げちゃったんだ」
腕を掴まれたまま質問され、頷く。
「あの、心の準備とか……あの、ぼく、逃げるつもりはなくて」
真っ赤になりしどろもどろ。
ああ、可愛いなあ。なんて思う佐々木。
「碧ちゃん初めてなんだからしょうがないよ。誰だって初めてって怖いでしょ?俺だって初体験の時は心臓バクバクして大変だったしな」
「さ、佐々木部長もですか?」
「うん、そうだよ。だから、安心してよ。」
ニコッと微笑んでくれたので碧は照れたように頷く。
「まあ、あいつ、真面目だから碧ちゃんが積極的になるしかないねえ」
「そそそ、そうですよね」
真っ赤な顔で何度も頷く碧の素直さに佐々木はまた笑う。
「じゃーね、碧ちゃん。あ、うちの星夜に色々と聞いたら?相談しやすいでしょ?」
うちの星夜………
うっ、なんかいいなあ。
自分のモノって言っているみたい。
「はい。相談します。………佐々木部長は星夜くんが好きなんですね」
付き合っているから当たり前なのだけど、聞いてしまった。
「気に入ってるよ。」
そう言って佐々木は手を振ると斉藤との待ち合わせ場所へと向かった。
いいなあ。なんて思った。
大人な関係。
僕もがんばります!!
誰に対しての決意表明なのか、碧は力むと医務室へと向かう。
◆◆◆◆◆
「あれ?碧ちゃんは?」
1人で医務室へきた西島にそう聞く神林。
「後から来る」
「んじゃ、お茶2人分用意するよ」
神林はカップを2つ用意する。
「なあ、コンドームは使ったのか?」
いきなりかよ。
直球な質問に苦笑いの西島。
「使い損ねた」
「はあ?まだやってねーの?」
驚いたように西島を見る神林。
「まだ早いと思ったんだ」
「お前は10代の子供かよ!」
「俺は違うけど碧は10代の子供だよ。」
「子供って……確かにまだ、そうだけど」
「俺は、無理矢理とかしたくないんだ。傷つけなくないくらい大事だからさ」
「ちひろ…………ほんと、お前ってクソ真面目」
呆れながらお茶が入ったカップを渡す。
「いいだろ?クソ真面目でもさ。碧の身体目当てじゃないし、俺は真剣なんだよ」
ムッとしてカップを受け取る。
「そんなに碧ちゃん好き?」
「好きだよ悪いか?」
真顔で返す西島。
「碧ちゃんを子供扱いして、恋愛にはならない!って感じな事言ってたのにな」
余りにも真剣に碧を好きだと返す西島に意地悪な言葉を思わず言う神林。
「確かに……碧は子供で、恋愛対象には出来ないって思ったよ」
でも、違う。
今は碧が好きで好きでたまらない。
◆◆◆◆◆
医務室のドアをノックしようとして碧は固まる。
碧は子供で恋愛対象にはならない。
西島の声が聞えてきたから。
…………ちひろさん?
うそ、………僕が昨日途中で逃げたから?
だからですか?
ノックする手が震えて、碧はその場を離れた。
◆◆◆◆
「はいはい、今は違うんだろ?」
神林は嫌そうに答える。
「好き過ぎてどうにかなりそう」
西島はそう言って笑う。
「この青春野郎!」
舌打ちする神林。
「それにしても碧ちゃん遅くないか?」
神林にそう言われ時計をみる。
確かに時間が経ちすぎている。
西島は碧の携帯に電話を入れる。
◆◆◆◆◆
「あ、良かった碧ちゃんいた!」
同じ課のスタッフが碧を見つけた声をかけてきた。
「はい?」
元気なく返事する。
「書類間違ってたよ?部長に怒られる前に直した方がいいよ」
先輩の男性スタッフが碧に見せた書類は午前中に扱っていたものだ。
「本当ですか?すみません」
慌てて書類を受け取る。
「これね、今日中に提出するやつだからさ」
先輩スタッフは教えてあげるよ、と碧と一緒にオフィスに戻ってくれた。
碧の上着のポケットの携帯がバイブしていたが書類に夢中で気付かないでいた。
◆◆◆◆
「繋がらない?」
神林に聞かれ頷く西島。
おかしいな?約束を破る子じゃないのに。
そう考えながら頭に佐々木の顔が過る。
まさか、佐々木?
いや、会社で変な事はしないだろう。
「ちょっと見てくる」
西島は不安を胸に立ち上がる。
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