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僕の初めてを貰ってください。 18話
◆◆◆◆◆
「西島くん」
医務室を出て直ぐに名前を呼ばれ振り返る。
「専務」
西島を呼び止めたのは専務だった。
「丁度、探してたんだよ」
ニコニコと人の良さそうな笑顔を見せ西島に近付いてくるナイスミドル。
「お見合い成功して良かったね。式はいつあげるんだ?」
「気が早いですね。まだまだですよ」
西島も専務の笑顔に釣られ笑う。
「でも、結婚はするんだろ?」
「するでしょうね?」
「その時は仲人するからね」
ニコニコ笑う専務。
「お願いします」
西島は頭を下げる。
そんな会話を聞いている西島の課の女性スタッフが慌てて、オフィスに戻って行った。
「なあ、西島くんも見合いしない?」
「しません!姉だけで結構です」
「ええっ、しようよ!」
「しませんって、付き合っている人居ますから」
「えっ?恋人居たっけ?あれ?」
「いました。じゃ、急いでいますから」
軽く頭を下げて西島は足早に去る。
見合いとか冗談じゃない!!
碧が居るのに。
西島はとりあえず佐々木が居る課に向かった。
◆◆◆◆◆
「これで大丈夫」
先輩スタッフは書類を見直して微笑む。
「すみません」
碧は深々と頭を下げる。
「いいよ、いいよ、碧ちゃん。後は提出するだけ」
「僕、持っていきます」
「いいよ、俺が持っていくから。碧ちゃんご飯は食べた後だよね?」
先輩スタッフはチラリと時計をみる。
「まだ……」
碧は俯く。
医務室での話を思い出したのだ。
「えっ?ほんと?ごめんね。食堂行っておいでよ、俺から西島部長には行っておくから」
先輩スタッフにそう言われたけれど、お腹は空いていない。
って、いうよりも食欲がない。
「もうう!ショックううう!!」
碧が落ち込んでいる中、女性スタッフが2名話しながら戻ってきた。
「えっ?なに?」
女性スタッフの声が大き過ぎるのとショックという言葉に先輩スタッフは興味を示す。
「西島部長お見合いして結婚するんだって」
「えっ?」
驚きの声を先に上げたのは碧だった。
「ね~、碧ちゃんもビックリでしょ?」
驚く碧に話しかける女性スタッフ。
「その話は誰に聞いたんだい?」
先輩スタッフも興味津々で聞いている。
「部長本人と専務が話してたの」
もう1人の女性スタッフがそう答えた。
その話に碧はフラフラと歩き出す。
「碧ちゃんどこいくの?」
女性スタッフに声をかけられたが、碧の耳には届かず、そのまま出て行ってしまった。
「碧ちゃん、ショックだったのかなあ?」
心配そうに言う女性スタッフ。
◆◆◆◆◆
佐々木を訪ねて行ったがまだ戻って居なかった。
電話してみるか?
………でも、碧と一緒とは限らないし、碧が着いていくとも思わない。
課に戻ってみるか?
いや、医務室に碧が行っているかも知れないから、戻ってみよう。
碧にもう一度電話しながら歩き出す。
◆◆◆◆
「佐藤くんご苦労様」
書類を提出すると、年配の男性に微笑まれた。
碧がペコリとお辞儀をして去ろうとすると、
「あっ、待って佐藤くん。お使い頼まれてくれるかな?」
「はい?」
「西島くんにはこっちから伝えるからさ」
碧は迷ったがいま、西島に会うと泣いてしまいそうで、
「わかりました」
と引き受けた。
◆◆◆◆◆
斉藤が佐々木と散々いちゃついて戻って来ると何やら騒がしい。
「どうしたん?」
近くにいた女性スタッフに聞く。
「斉藤くん、西島部長がお見合いして結婚するらしいよ」
「はあ?」
女性スタッフの答えに斉藤の声がデカくなる。
お見合い?結婚?
そんなバカな?碧がいるのに!!
「どっからそんなデマ出たんだよ!」
つい、興奮気味に聞き返す。
「ちょっ、斉藤くんなんか怖い。西島部長と専務が話してたんだってよ」
「んな、わけあるかよ!!」
思わず怒る斉藤。
「だから怖いってば!なに?斉藤くんも碧ちゃんみたくショックなの?」
「えっ?碧?」
「うん、碧ちゃん。その話聞いてフラフラと出て行ったの」
「いつ?!」
「斉藤くんが戻ってくる20分前かなあ?」
「どこ行った!!」
必死になって聞いた。
碧がショック受けてる?
えっ?どういう事だよ?
わけわかんない!でも、とりあえずは碧が心配。
「碧ちゃんなら書類提出しに行ったよ?」
碧に書類の書き方を教えた先輩スタッフが答えた。
「どこに?」
「総務」
斉藤は猛ダッシュで総務に向かった。
◆◆◆◆◆
おかしい。
碧がどこにもいない。
医務室にも結局は来なくて電話にも出ない。
「碧ちゃんどうしたんだろうね?」
神林も心配そうな顔をしている。
やはり佐々木?
佐々木に電話してみようか?
携帯を取り出した時に誰かがドアを開けた。
「胃薬ある?」
そう言ってドアを開けた誰は西島に気付き、
「西島くん。そっちに行こうとしてたんだ。良かったよ会えて」
ニコニコと笑いながら話し出すその人は、
「君の課の佐藤くんにお使い頼んじゃったんだ。ちよっと遠いから直帰してもいいよって言っちゃったんだ、ごめんね」
と続けた。
「えっ?佐藤を……ですか?」
「うん、書類提出に来たから頼んじゃった」
「そう………ですか。昼飯食べないまま行ったのか」
だから、来ないし、電話にも出なかったのか。と思った。
「えっ?あの子ご飯食べて無かったの?そりゃ申し訳なかったなあ。あっ……だから元気無かったのかな?」
碧の様子を思い出しながら、申し訳なさそうな表情を見せる。
元気がない。………やっぱ、気にしてたか。
西島は電話に出れないかも知れない碧にメールを打ち出す。
◆◆◆◆◆
「星夜どうした?」
総務に走る途中に佐々木に出くわした。
「碧、碧を探してて」
「えっ?碧ちゃん?どったの?」
「総務に碧を探しに」
息を切らしながら答えるが佐々木のした質問の答えにはなっていない。
「碧ちゃん総務には居ないぞ?俺は総務から来たから」
「えっ?」
「で?どったの?なんで碧ちゃん探してんだ?」
「西島部長が………」
斉藤は西島が結婚するという噂話をした。
◆◆◆◆◆
結局、西島もお昼を食べそこねた。
1人で食べても美味しくないし、碧が食べていないのに、食べる気はしない。
昼休みも終わりそうなので課に戻った。
そこで待ち構えるのは西島結婚にどよめくスタッフ達だった。
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