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僕の初めてを貰ってください。 22話

「あれえ?諭吉?どうやってきたの?」 女性の声がした。 西島はその女性に視線を向ける。 とても可愛らしい女性。 年齢的に碧のお姉さんかな?っと思っていると、女性が西島に気付いた。 軽く会釈して名乗ろうとする前に、 「西島……さん?」 と名前を呼ばれた。 何で名前を?と不思議がっていると、 「碧ちゃんに見せて貰った写メよりかっこいい!!もしかして、碧ちゃん迎えに来たんですか?」 目をキラキラさせて話しかけてきた。 「は、はい、西島です」 頭を深々下げる。 「初めまして、私、碧の姉の夏です」 夏は人懐っこい笑顔を西島に見せる。 「あ、あの、お父さんが怪我したって聞いたんですが碧くんは?」 大丈夫なのかな?と心配を口にする西島。 「ああ、お父さんね、碧に会いたいが為に大袈裟に言ったのよ。ただの捻挫」 クスクス笑いながら答える夏。 「そうですか、大怪我じゃなくて良かった。それで碧くんは?」 「碧はきのこ採りに裏山にいるんです。夕飯にどうとか言ってたから」 夏は山を指差す。 西島の足元の諭吉は尻尾でパシッと彼の足を叩くと山へ歩き出す。 「案内するばい」 振り返りそう言う。 「あ、あの、夏さん、碧を迎えに行ってきます。後からちゃんと挨拶に行きますから」 西島は夏に深々と頭を下げ、諭吉の後を追う。 「やーん、西島さんかっこいい!」 夏の目はキラキラしていた。 碧ちゃん、良かったね。西島さん迎えに来てくれたよ。 帰ってきた碧が元気が無くて話を少し聞いていたのだ。 ◆◆◆◆ ちひろさん……… どうしてるかな? まだ、仕事かな? 碧は西島の事を考えながらきのこを採っていた。 佐々木の部屋で押し倒された後、 「碧ちゃん、俺と賭けない?」 と賭けを持ち出された。 「賭け?」 「そう、俺が碧ちゃんを抱くと言ったら西島は仕事をサボって来るかの賭け」 碧は……困ってしまった。 西島は部長だから責任があるし、あの言葉を聞いた後だから自信がない。 来て欲しい。 来て欲しいけれど自信がないから賭けには乗れない。 「む、むりです」 じんわりと涙を浮かべる碧。 「やってみないと解らない事もあるんだよ?碧ちゃんは泣いてばかりいて、解決しようとしないだろ?結婚の噂も西島に聞けば誤解だって分かるのに聞かない……先に進みたいなら泣いてちゃ駄目だ………賭けに乗らないならこのまま抱くよ?」 「えっ………?」 佐々木の言葉はチクンと心を刺してくる。 本当にそうだ。泣いてばかりいる。 「どうする碧ちゃん?俺は西島とは違うから好きな子にはガンガン手を出すタイプなんだ。初めてが俺になるよ?大人にしてあげる」 佐々木は碧のシャツをたくし上げた。 「や、いや!」 碧は必死に抵抗するが押さえつけられ動けない。 「やだあ、いやです」 イヤイヤと頭を振る碧。 「じゃあ、乗る?」 碧は涙目で頷く。 「俺は来る方に賭けるよ」 「ちひろさん……お仕事あるもん……」 「じゃあ、碧ちゃんは来ない方に賭けるんだね」 佐々木はニヤリと笑うと、 「俺が勝ったら碧ちゃん、西島に抱いて下さいって言って西島を押し倒して初体験済ませる事!」 「えっ?」 何ですか?それ? そんな顔で佐々木を見上げる。 「自分の気持ちを全部言うこと」 「僕が勝ったら?」 「俺が勝つよ?でも、まあ……碧ちゃんのいう事何でも聞くよ」 そんな契約したのに、父親が怪我したという電話がきてしまった。 もし………あのまま、 ちひろさんは来てくれたかなあ? じんわりと涙を浮かべた瞬間、 「碧!!」 西島の声がした。

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