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僕の初めてを貰ってください。 23話

「………ちひろさん…どうして?」 碧の目の前には西島。 涙がポロポロと零れてくる。 「ちひろさん……しごと……」 いいんですか?と聞く前に西島に強く抱きしめられた。 「碧ごめん」 耳に聞こえてくる西島の声は本物で、夢見ているんじゃないかって思っていた碧は声と、体温と香りが夢じゃないと教えてくれる。 強く抱きしめてくれる西島。 賭けは佐々木部長の勝ちですね。 そう思った。だから、 「ちひろさん、ぼくは………ちひろさんが欲しいです。子供じゃないです。だから、ぼくの………初めてを貰ってください」 佐々木が言った通りにちゃんと言葉にした。 「碧………」 西島は碧の顔を見つめるように向かい合う。 「ぼくを、……抱いてください」 涙をポロポロ零して必死に訴える碧。 こんな言葉を言わせてしまう程に追い込んでしまっていたのだと、気付かされる。 碧の涙を指先で拭き取る。 「うん………俺も碧がほしい」 西島は碧の方へ顔を傾け、キスをする。 甘い、甘いキス。 腰に手を回し、引き寄せた。 碧の唇を割って舌をいれ、絡ませる。 碧も応えるように舌を絡ませてくる。 息をするのを忘れるくらいに何度もキスをした。 くちゅくちゅと舌が絡まる音と互いの甘い吐息で森林のざわめきが消える。 何度もキスをして、ようやく落ち着いたのか唇が離れた。 「碧、ごめんな不安にさせて」 西島は碧の両頬を自分の大きい手で包む。 「ちが……ちひろさんは…わるくないです。…僕が勝手に……不安になってただけです」 ぐすぐす、鼻を啜りながら潤んだ瞳で西島を見つめている。 「違うよ、俺も同じなんだよ。俺も不安で……無理やり抱けば碧に嫌われるんじゃないかって…俺みたいな年上のオッサンに碧の初めてを奪っていいのかな?とか……すげえ、空回り」 不安………ちひろさんも不安なんですか? 僕みたいに不安だったんですか? それが凄く嬉しい。 「ちひろさんが僕が子供だからって神林先生に言ってたから不安になって」 「へ?」 神林……?って、まさかあの時、居たのか!!! 西島は神林に碧の話をしていた事を思い出した。 「ばか、あれには続きがあるんだよ!碧を子供だと思っていないと碧に手を出しそうで……そんな話だったんだ。碧は子供なんかじゃないよ、充分に魅力的な子だよ」 「ほ、ほんとうですかあ?」 碧の瞳がまた涙で濡れる。 本当に泣き虫だ。 俺が守ってあげなきゃ……… 「好きだよ、佐々木にやられるかと思って焦った」 「ちひろさん…………ううっ、ごめんなさい。僕のためにお仕事……」 うえーん、と声を上げて泣き出す碧を慌てて抱き寄せて、 「仕事はいいんだ!もし、何かあっても、仕事はいくらでもある。でも、碧は1人しかいない。仕事よりも碧が大事に決まっているだろ、だから、泣かなくていい」 よしよし、と頭を撫でられ碧は背中にギュっと手を回す。 すきです。 ちひろさん、だいすき。 泣きながら何度も心で繰り返す。 「碧………帰ろう」 耳元で囁かれる。 「部屋で碧を抱きたい。全部俺のモノにしたい」 西島の言葉に碧は何度も頷く。 「ぼくも……ちひろさんがほしいです。泣いても止めないでください」 碧は西島の顔を見上げてそう願った。 「止めないよ、止めれるはずがないだろ?」 西島は碧の額にキスをして微笑む。 「はい。嬉しいです、ぼく………早くちひろさんのモノになりたいです」 照れたように微笑む碧。 あー!!もう、この小悪魔め! 大胆な台詞吐いているって気付いていないんだろうなあ。 天然小悪魔にずっと翻弄されるのもいいかも。なんて西島は思った。

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