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家族になりたいです。 6話
◆◆◆◆◆
気付けば佐藤家の食卓の輪の中に居る西島。
「部長さん、良か男やなあ。俳優さんごたるね」
祖父がニコッと西島に微笑む。
「本当に、碧がカッコイイって言うだけあるねえ、韓国ドラマのイケメンみたいやん?」
祖母がそう言うと、
「でた、婆ちゃんの韓流好き!ちょっと良か男みたらそれやん」
長男の肇が嫌味を言う。
「でも、イケメンやもんねえ」
母親は嬉しそうに張り切って作った料理をテーブルに並べている。
料理を運ぶのを手伝う夏も、「肇ちゃんは面白くないのよ、碧ちゃんが西島さんベッタリだから」
そんな事を言う。
碧は西島の隣にベッタリと座っている。
夏と母親に手伝うと碧も言ったのだが、西島の隣に居なさいと言われ、大人しく横に居るのだ。
「そ、そんな事ない!西島さんはカッコイイと俺も思う。」
肇は慌てて弁解をする。
ブラコンなのは肇だけではないと西島は感じていた。
他の兄2人も碧を可愛がっているように感じたし、姉や両親、祖父達にも愛されているんだと感じる。
愛されて育ったから碧はこんなにも素直で可愛い子なのだと納得出来る。
こんな家庭…………凄く憧れる。
常に笑い声がある温かい家族。
西島にはないものだから。
会話に西島も参加しながら食事が始まる。
どの料理も美味しいから、「凄く美味しいですね」と作った母親にお礼を言って微笑む。
その微笑みに可愛く頬を染めて、
「西島さんも料理上手なんでしょ?碧が美味しいと言ってて、あっ、いつも、碧に美味しいご飯作ってくれてありがとうございます。」
ペコリと頭を下げた。
「いえ、おれ、あっ、私の料理なんてお母さんが作った料理に比べたら全然」
西島は慌てて否定。
「きゃー、西島さんもう1回お母さんって言ってみてください!」
西島が言ったお母さんに凄く反応する母親。
「ほんと、ミーハーやなかあちゃん」
次男が恥ずかしそうに西島に頭を下げる。
「あの、西島さんっていくつですか?部長さんって碧から聞いてたから中年のオッサンと思ってたのに若くてイケメン」
三男の理が興味津々で聞いてくる。
「今年…………三十路です」
恥ずかしそうに答える。
「えっ?まだ29で部長なんですか?すごい!肇兄より年下」
チラリと肇を見る理。
「早い出世したんねえ、すごい!やっぱ、イケメンは違う」
祖母の言葉に
「イケメンは関係なか」
と鼻息を荒くする肇。
「もう直ぐ三十路って事は誕生日はいつなんですか?」
郁が聞く。
「8月です。」
西島の答えにピクッと反応する碧。
ちひろさんの誕生日、僕……知らなかった。
こ、恋人なのに……
「夏生まれなんやねえ西島さん、俺と歳近い」
郁は28なので西島より1つ下になる。
「誕生日近くなったら碧とまた来たらいいですよ、一緒に誕生日バーベキューしましょう」
父親がそう提案する。
「そんな悪いです、こうやって夕飯ご馳走になっているのも悪いのに」
「遠慮せんで良かですよ、碧が世話になってるでしょ?騒がしい家ですけど、ちょくちょく遊びに来て下さい」
ニコッと微笑む父親。
優しい笑顔は碧に似ている気がする。
親子なのだから当たり前なのだが。
「騒がしくないですよ。凄く温かい家族です。碧くん見てると分かります。良い家庭に育ったからこんなに、素直で良い子なんだなって」
碧に微笑みかける西島。
ちひろさん………嬉しいです。僕の家族を誉めてくれるなんて………。
えへへと笑い返す碧。
「西島さんって一人っ子?」
郁が興味津々で聞いてくる。
「姉が1人」
「美人なんでしょうね、西島さんイケメンだし」
「いや、どうかな?」
ミサキを思い出し、首を振る。
「両親は?」
郁の質問にピクッと反応して、
「両親は………2人とも」
そう言って言葉を濁す。
えっ?ちひろさんのお父さんとお母さんって……
ぼく、何も……
ちひろさんの事、何も知らない。
碧はシュンとなってしまった。
西島が口にする回答は碧の知らない情報ばかり。
恋人なのにと落ち込むのだ。
「郁のばか!碧ちゃんもへこんだじゃないの!」
碧の変化に気付き、夏が注意する。
確かに自分の横でシュンとなっている碧に気付き、西島は頭を撫でる。
「気にしなくていい」
でも、……っと言葉を続けそうになり口を結んで頷いた。
西島を元気づける言葉を探せなかったから。
人生経験が浅い子供な自分が大人の西島を元気づける言葉を言えるはずもなかった。
「………寂しいね。でも、君には碧が居る」
父親の発した言葉に西島は目を丸くして驚く。
いま………なんて言った?
「付き合ってるんでしょ?」
母親が発した言葉にも西島は驚きフリーズ。
あれ?
アレアレ?
碧が言った?
西島は碧にそんな顔をして、見つめる。
碧は言ってないと首を振る。
碧の両親は二人をニコニコしながら見ている。
てっきり、部下と上司として迎えてくれていたと思っていた西島。
碧の家に向かうと決めた時に心に決めた事があった。
碧と自分の仲を家族に認めて貰おうと。
家族に反対され、部下に手を出したと会社に言われ首になったとしても駆け落ちする覚悟で話そうと決心していたのだ。
なのに…………
あれえ?
何か………うん、バレてるよ。
西島は意を決したように、
「はい、碧くんとお付き合いさせて貰っています!」
と頭を下げた。
「ち、ちひろさん!」
碧も顔を真っ赤にさせ、驚く。
「うん、夏に聞いて知ってる」
両親が口を揃えて答えた。
夏はテヘペロっとちょっと懐かしい反応を見せる。
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