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寂しい時も僕が側にいます。6話
◆◆◆◆◆◆
碧を抱きしめたままウトウトしていた西島はスマホのバイブに気付く。
………くそ!誰だよ!!
佐々木だったら殺す!!
そう思いながら身体を起こしてスマホの表示を確認。
ミサキかよ………。
居留守使おう………。どうせ、くだらない用事に違いない。
そう思って留守電に切り替える。
そして、スマホをポンっと、軽く投げて横になろうと思った瞬間に、またバイブした。
くそっ!!
面倒くさそうにスマホを取ると今度は神林。
それには素直に対応。
「もしもし?」
「ちよっと!!ちーちゃん、神林くんの電話には出るのね!!」
聞こえてきたのはミサキの声。
なんで??
「はあ?お前何で神林の電話に出るんだよ?」
「ちーちゃんのお見舞いきたら神林くんに会ったの。それで、今一緒」
「あっそ、じゃあ、切るから!」
「ちょ!!待って!!具合大丈夫なのよね?」
心配そうな声。
「大丈夫だよ。それから、見舞いとかいいから。あと!頼むから俺の情報をアイツには回すなよ?じゃないと、ミサキとももう会わないから」
「ちょ!なにそれ?………言わないよ?ちーちゃんの嫌がる事を私しないでしょ?」
「しただろ?この前……」
西島の拗ねたような声にミサキは、
「……分かってるよ。だから、もう会わないとか言わないで」
と、少し寂しそうに応えた。
寂しそうな声に西島も言い過ぎたかな?なんて思ってしまって、
「分かればいいんだよ」
と優しいトーンで返事を返した。
「じゃあ、神林くんに代わるね」
「いや、いいよ。ありがとう。って伝えて……」
そう言って西島は電話を切る。
そして、碧を起こさないようにベッドから起き出した。
◆◆◆◆◆
「ちーちゃん、ご機嫌ナナメ」
ミサキは神林に電話を返す。
「後からフォローしとくから」
神林はミサキに優しく微笑む。
「やっぱ、お父さんと会わせるの無理なのかなあ」
ミサキは大きくため息をついた。
「千尋は頑固なとこあるから」
「知ってる……ちーちゃん、ホントは寂しやがり屋のくせにさ!」
「あと、クソ真面目」
神林の言葉にミサキは笑い出す。
「確かに………恋愛とかどうしてんのかな?ちーちゃん、恋人の話とかしないし紹介された事もないもん……ちーちゃんって顔いいじゃない?会社でも人気あるって聞いてるし、学生時代もモテてたでしょ?」
「男女問わず」
学生時代、西島は圧倒的に男子に人気があった。
恋愛とかじゃなくて、憧れる感じの。
神林もそうだ。
でも、神林だけは恋愛感情が含まれていた。
◆◆◆◆◆◆
ベッドに碧を残し西島は水を飲みにキッチンへ。
ニャーンと足元で諭吉の鳴き声。
「なんやニッシーそげんしかめっ面してくさ」
「うるさい、しかめっ面なんてしてない」
「しとる、しとる、しかも機嫌も悪かし、なんや、猫にやつあたりや?」
諭吉にそう返され、
「ごめん、そんなつもりない」
と素直に謝る。
「人間は大変やな。ニッシーは碧に隠し事あるやろ?」
その言葉にドキッとする西島。
「ニッシーは全部溜め込むタイプみたいやけん、1人で悩んでイライラして、ヘコむ感じばい」
当たっている………
西島は猫にズバリと当てられて、その方がへこむ!!なんて考えていた。
「隠すつもりはない。……でも、全てを話すのは勇気がいるんだよ……悪かったな、やつあたりして」
西島はしゃがむと諭吉の頭を撫でる。
「碧にしたいだけマシばい」
頭を撫でられた諭吉はゴロゴロと喉を鳴らす。
「そうだな。まあ、お詫びにマグロでも………」
「マグロううう!!」
西島のマグロという言葉で諭吉はシャウト。
「あー、うるさい!!碧が起きるだろ?」
「昼寝し過ぎると夜寝れんばい?あっ?さては寝かせない気か?ニッシーってほんと、ムッツリばい」
諭吉が人間だったら、きっと、いま、佐々木みたいにニヤニヤしている……
ムッツリとか………
くそ!!
碧と散々エロい事をした自分を思い出し、言い返しは出来ない西島であった。
◆◆◆◆◆
寝返りで目を覚ました碧。
うっすらと開けた視界のどこにも西島の姿がない。
慌てて起き上がる。
いま、何時?
ちょっと寝るつもりだったのに………
時計を確認。
夕方近い時間。
うわああ!
ね、寝すぎ!!ぼく、寝すぎだよおおお!!
碧はベッドから降りてリビングへ。
「碧、どうした?慌てて?」
リビングでダンボールを組み立てている西島がいた。
「ちち、ちひろさん、ごめんなさい!ぼく、寝すぎて」
碧は西島にそう謝りながら頭を下げる。
「なぜ、謝るの?碧を疲れさせたのは俺なのに」
碧に微笑みかけると、彼は耳まで真っ赤になった。
たぶん、抱かれた事を思い出しているのだろう。
そんな可愛い反応をする碧を抱きしめたくてたまらなくなる。
「おいで」
手招きをすると、素直に側に来る碧。
腰に手を回し、彼を引き寄せて膝の上で抱っこする。
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