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僕が寂しい時も側にいます。 15話
◆◆◆◆
西島の部屋のチャイムが鳴った。
モニターで確認すると神林が手をヒラヒラと振っている。
意外と早く来たな……
西島はドアを開ける。
「よお!超過保護のちひろ君」
ニヤニヤした顔の神林をみて、
「悪かったな超過保護で!」
と拗ねたような顔をする。
「で、碧ちゃんは?」
「一応、大人しくさせてるよ」
そう言って西島は神林を部屋に上げる。
「後から佐々木と斉藤くんが来るって張り切ってたぞ」
「あ~~、斉藤はいいとして、佐々木は要らないかもな」
ちょっと嫌そうな顔をする西島。
「わあ、神林先生!」
ソファーでテレビを見ていた碧は嬉しそうに神林に微笑む。
ソファーの上でシーツに包まっている碧がなんだか子供に見えて可愛い。
「大丈夫?」
「も、もしかして、ちひろさんが呼んだんですか?」
碧は引っ越しの手伝いに来てくれたんだと思っていたが、具合をきかれ、自分の様子を見に来たのだとわかった。
「ちひろは超過保護だからな」
神林は碧の側へといき、とりあえずは診察をする。
元気にしか見えないので診察はしなくてもいいのだけれど、過保護な西島を納得させる為に行うのだ。
「ぼ、ぼく、平気です。鼻血も止まったし」
「うん、平気みたいだね。元から鼻血出やすいのかな碧ちゃんは?気をつけてね。特にちひろ!」
神林はチラリと西島をみる。
原因はお前だろ!!と目で訴えた。
「引っ越しするんだろ?手伝うよ。後から斉藤君達も来るって」
神林は碧の頭を撫でる。
「は、はい!僕の引っ越しなのにすみません。」
碧は深々頭を下げた。
「ほんと、碧ちゃんは良い子だね。ちひろにはもったいない」
「えっ?ぼ、僕の方がです!!ちひろさんはカッコイイから。」
「ふふ、そんな事言う碧ちゃんも可愛いね。」
一生懸命な碧にはやはり敵わない。
純粋で可愛くて一生懸命。
自分には無いものだ。
出会ったのは自分が先。
碧がまだ幼い頃だ。
不思議だ……幼い碧と学生だった自分達は少しのズレがあれば出会えていなかった。
碧が西島のいる会社に入社しなかったら出会わなかった。
もし、そうだったら西島の隣に居るのは誰だったのだろう?
そんなくだらないコトを考えてしまう。
◆◆◆◆◆
引っ越しの為に3人と1匹が碧の部屋に居る。
猫の手も借りたい。なんていう訳でもなく、ドアを開けた時に諭吉が先に出てしまったのだ。
まずは荷物整理。
役割分担を西島がしてくれて、部屋の持ち主の碧はこの際処分してしまうモノを分ける仕事。
西島と神林は段ボール箱を持ち込み、碧が分けたモノを箱に入れ、運んで行く仕事。
さりげなく、力仕事は西島と神林が行う事にした。
碧の持ち物は碧らしいというか、ファンシーな猫グッズが多くて西島を和ませた。
「碧ちゃん猫グッズ多いね。ちひろの部屋にも猫の縫いぐるみあるだろ?」
神林もその碧らしい持ち物に和んだ1人。
「はい。アレはデート記念にちひろさんが買ってくれました」
嬉しそうにえへへっと笑う碧。
溺愛だな、マジで……と碧の笑顔に釣られて神林も微笑む。
「抱きまくらとか可愛いね。碧ちゃんコレ使ってたの?」
祖母が作ってくれた諭吉抱きまくらを手にする神林。
「はい。おば……祖母の手作りです。」
お祖母ちゃんと言いそうになるのを訂正する碧。
抱きまくらで眠る碧を想像する神林と西島。
ああ、可愛いだろうなあ……と。
「でも、もう要らないんじゃない?ちひろと寝てるんでしょ?」
軽い冗談のつもりだったのだが、碧がすごく真っ赤な顔をして俯き、「………はい」と小さく呟いたものだから、
「ちひろーー!なんか、いま、お前がすごーく羨ましくなったぞ。こんな可愛い子を抱っこして眠れるなんて!」
と神林は西島の胸ぐらを掴む勢いでそう言った。
「まーな。羨ましいだろ?でも、碧はやらん!いくら、お前でもな」
と勝ち誇った顔を見せる西島。
「はいはい。ごちそうさまです」
ノロケる西島に愛想なく切り返す神林。
「お前って溺愛タイプだったのな?昔のお前からじゃ想像つかない」
「俺も知らなかったよ」
西島はそう言いながらファイルみたいなモノを手にした。
クリアケースに入った分厚いファイルはアルバムかな?と気になった。
「碧、コレって写真?」
碧に聞いてみる。
「あ、はい。そうです。小さい時の写真を少し持ってきてたんです」
「えっ?見ていい?」
西島と神林の声がハモる。
「は、はい……恥ずかしいけど、いいですよ」
碧の許可が下りたので西島はケースからファイルを出し、開いた。
そこには天使みたいに可愛い碧がたくさん。
な、なんだこの可愛い生き物は!!と西島は興奮。
女の子よりも可愛い碧。
たぶん、家族もそう思っていたのだろう。幼い碧はほぼ、女の子みたいな格好をさせられていた。
「碧ちゃん、女の子みたいだね」
髪をツインにした2歳くらいの碧が女の子と手を繋いでいる写真をみた神林がそう聞いた。
「夏姉……あ、僕の直ぐ上の姉のおさがりなんです。」
「お姉さんも可愛いね。こっちはお兄さん?へえ、兄弟多いんだね」
兄3人と姉1人……そして、末っ子の碧。
きっと兄弟からも溺愛されているだろうなと神林は思う。
写真から伝わってくるのだ。
「あれ?諭吉?こんな小さい頃から一緒なの?長生きだね」
3~4歳くらいの碧と一緒に居る子猫の写真があった。
「はい。諭吉、長生きなんです。僕のお兄さんなんですよ」
ニコッと笑い自分に寄り添って写真を覗く諭吉の頭を撫でる碧。
「諭吉、お前凄いな」
神林も諭吉の頭を撫でた。
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